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RONIN
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何だか久しぶりという感じの犯罪ハードボイルド。
まったのは何やら胡散臭い連中です。どうやら、ディエドラ(ナターシャ・マッケルホーン)という若い女が首領でスポンサー、そして、ヴァンサン(ジャン・レノ)が調達係のようです。仕事はあるオヤジが後生大事に抱えているスーツケースを奪うこと。ところが、武器の調達から、銃撃戦となってしまい、何だか前途多難みたいです。チームの一人サム(ロバート・デ・ニーロ)はこの仕事に何か裏があることを感じているようです。いよいよ本番、しかし、意外なところからこのチームは足をすくわれてしまいます。一方、彼ら以外の怪しい連中も暗躍し始めるて、事態は単なる金がらみだけではすまない様相を呈してきます。
バート・デ・ニーロにジャン・レノががっぷり四つに組んだ犯罪アクションです。タイトルの「RONIN」とはもろに武士の浪人を指します。つまり仕える主君がいないサムライの事、この場合は金で仕事を請け負うサムのような連中を指しているようです。仕事のスポンサーも不明で、相手の正体すら不明なのです。それでも、仕事を的確にこなすプロフェショナルを、デ・ニーロとレノが寡黙に演じきるあたりのカッコよさが見物です。さらに脇役にかなりすごいメンツを揃えているのが見物です。他の映画ではかなり大物敵役を演じるようになったショーン・ビーンが若造として登場しますし、観ている時は気付かなかったのですが、「奇跡の海」のヒロインの夫、ステラン・スカルスゲールドとか「007・トゥモロー・ネバー・ダイ」の悪の大ボス、ジョナサン・プライスといった渋い面々が怪しげな人物を演じていまして、特に、スカルスゲールドやプライスは、出る映画ごとにまるで印象が異なる、いわゆる化ける役者さんだけに、この作品でも先入観の入りようのない謎のキャラクターを見事に演じきりました。
者のうまさだけでなく、ストーリーもかなり混みいったものです。脚本家の一人、リチャード・ウェルズは「スパニッシュ・プリズナー」のデビッド・マメットの変名だそうで、後半はなかなかに意外な展開を見せます。そして、舞台となるフランスで落ち着いた色使いの絵作りをしたロベール・フレーズの仕事も見事です。また、久々に派手なカーチェイスが見せ場として登場する作品でもありました。ローアングルのキャメラと音響の迫力に、物量にものを言わせたクラッシュシーンは、それだけで一つのドラマを成す迫力がありました。今風のノンストップアクションとは違って、そういう見せ場にすべて人間に息遣いを織り込むことに成功していまして、このあたりはジョン・フランケンハイマー監督のパワーではないかと感じました。
の監督さんは、昔はすごい映画を何本も撮ったそうですが、私が彼の映画を観始めたのが、「フレンチ・コネクション2」からですので、パワーのある職人さんというイメージが強いです。この映画でも、登場人物のリアクションを丹念に追っていく演出が、見た目の派手な仕掛けに奥行きを与えています。オープニングから何やらテンション高いドラマが始まって、ダレそうになると、カーチェイスを入れたりというあたりと、なかなかに娯楽映画のツボをおさえながら、きっちりとドラマを見せることに成功しています。サムライへのこだわりも、ほんの少々説明が入るだけで、妙に趣味に走って娯楽アクションから逸脱しないセンスが買いです。個人的には世間の評判のあまりよろしくない「プロフェシー」「イヤー・オブ・ザ・ガン」「DNA」「対決」といった映画も私は結構好きです。どんな題材でも、きちんと一本の映画としてまとめあげる力量は、観客の私からすれば、安心のブランドと言える名前になっています。
台がフランスであるせいか、全体にどこか落ち着きがあり、アメリカ映画の陽性の印象がほとんどありません。巻き添えを食って死ぬ人間も相当数出ますし、全体のタッチは、重くそして冷酷な印象です。また、人間関係を明確にしなかったり、結末もすべてをきれいに説明しないで斬って落とすあたりがハードボイルドという後味を残します。その説明しきらない部分を役者の演技で見せきるあたりが、演技と演出のうまさではないかと思う次第です。トニー・スコットやマイケル・ベイのアクション映画に比べれば、「あー、面白かった」という後味は少ないですが、「あー、映画を観たなあ」という気分で劇場を出ることができます。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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デートコースにはどうかなと思う、ちょっとヘビーなアクション。
こういう映画をもっと観たいという期待をこめて。
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