夢inシアター
みてある記/No. 149

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ライフ・イズ・ビューティフル
ライフ・イズ・ビューティフル

- La Vita Bella -

前評判の高い映画ですが、うーん、うまいって感じかな。

1999.5.15 神奈川 川崎チネBE にて


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は第二次世界大戦前、グイド(ロベルト・ベニーニ)は、叔父を頼って、ホテルのウエイターになります。そして、小学校の先生をしているドーラ(ニコラッタ・ブラスキ)と知り合い、ファシストの婚約者がいた彼女のハートを射止め、かわいいジョズエという息子をもうけます。ところがグイドはユダヤ系だったので、差別の果てにある日、ジョズエともども収容所の送られてしまいます。ドーラもその後を追いますが収容所では男女が別れてしまいますので、会うことはできません。グイドはジョズエに「これはゲームだ。勝てば戦車がもらえて家に帰れる。」と嘘をついて何とか生き延びる方法を模索するのですが.......。

画は二部構成をとっています。前半はグイドがある街に移ってきて、ドーラと知り合い、彼女のハートを射止めるまで。そして、後半は収容所に送られてからの物語となります。そして、ドラマと比重が両者とも同等に振り分けられているのが興味深いところです。全体のトーンは、収容所物語というより、グイドというちょっと変わった男の半生という印象でした。ベニーニ本人はユダヤ系ではないそうでして、あくまでユダヤ人迫害とか強制収容所といったものを物語の背景として使い切りました。確かに逆境として登場する収容所生活なのですが、そこに怨嗟といった感情を盛り込まず、家族愛と笑いを持ち込んだところがなかなかにスゴイところです。

争を描いたら、それは「反戦映画」でなければならない、収容所を、「ナチス告発映画」でなければならないような雰囲気を感じてしまう最近の傾向としては、作者の視点の置き方は大胆ですが、その描き方は非常に細やかで、配慮の行き届いたものと思えました。コテコテ喜劇役者ロベルト・ベニーニが脚本・監督したワンマン映画なのですが、脚本家、監督としてのベニーニが役者ベニーニをうまく使い切ったという印象です。

半で徹底してグイドのキャラクターで笑いをとるあたりは、多少くどいかなという気もしたのですが、そのアクの強さが、後半の収容所に移ってからの展開において、現実とのギャップという呪縛からこの映画を救っています。この主人公のテンションの高さは、実録収容所ものというよりは、収容所という設定の人情喜劇の舞台を観ているような気がしました。映画のリアリティから一歩離れることにより、このドラマは一種の寓話のような輝きを持つことに成功しています。「人生は素晴らしい」という絵に描いたような題名も、この映画の持つカラーを明快に表現しています。

人公は差別や収容所といった理不尽な扱いに対して怒りを見せることがありません。常に明るく、ハイテンションで、自分の笑いで自分を励ましているようなところがあります。シリアスになりかかる部分もそれを全て飲み込んでしまうグイドという人間は、ちょっとリアリティという点では不満です。ところがラストでこの物語の語り部が正体を現すことによって、その疑問や不満がすべて解決するあたりの構成のうまさにはうなってしまいました。なぜ、収容所生活がゲームであり続けることができたのか、そのあたりの秘密は劇場でご確認ください。

た、収容所の生き地獄を際立たせないためか、グイドとドーラの幸せな生活をばっさりとカットしたあたりのセンスもうまいと思いました。主人公のキャラクターをきっちりと説明するのが主眼であるかのような前半の展開も、後半を寓話化するための伏線だとすれば、納得できるものがありますし、それは見事に成功しているように思います。グイドは年柄年中しゃべりっぱなしの騒々しいキャラクターである一方、大変聡明な頭脳も持っていて、機転の利く男でもあるというのが、後半の展開を無理のないものにしました。また、前半で彼がシリアスな顔を見せる瞬間を出さなかったのが成功しています。叔父の愛馬にユダヤ差別の落書きをされたときでさえ、飄々と受け流し、感情の起伏を表に出さないというのが、主人公のキャラクターに迫りすぎないドラマを形作っています。

れは「もしも」の物語だという事ができます。あの時、あの場所にグイドのような男がいたとしたら、一体何をしただろうという視点からの物語です。これは、実話の映画化である「シンドラーのリスト」や「遥かなる帰郷」などとは、明確に一線を画すものです。こういう題材を扱って笑いをとるとき、ブラックユーモアならOKで、人情喜劇はダメということもないでしょうから、この作品のような映画がもっと登場してきてもいいように思った次第です。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 収容所で主人公一人が浮いてるところに作者の配慮を感じます。
お約束ですが、ガキはかわいいぞ。
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