スパニッシュ・プリズナー
スパニッシュ・プリズナー
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The Spanish Prisoner
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いわゆるサギのお話なんですが、主人公が素直な奴なもんで、もう.....。
る企業のシステム開発者ジョー(キャンベル・スコット)は、社長(ベン・ギャザラ)に自分の功績を何とか金額で認めさせようとしているのですが、なかなかうまくいきません。リゾート地での会社重役へのプレゼンテーションの時に、ひょんなことから、ジミー・デル(スティーブ・マーチン)という男と知り合います。この男が妙にジョーに接近してくるのですが、何だか胡散臭いんだわ、このオヤジ。一方お人好しのジョーはなんとなくジミーのペースにはまっていってしまいます。何だか大丈夫なのかしら。
本、監督のデビッド・マメットという人は舞台作家としても有名な人で映画の脚本でも「評決」「ウワサの真相、ワグ・ザ・ドッグ」「摩天楼を夢みて」など面白い映画の脚本を何本も手がけています。今回は彼が脚本、演出の両方を担当して、意外や意外の展開を見せるドラマを作り上げました。「スパニッシュ・プリズナー」というのは詐欺の典型的なパターンなのでそうです。どういうパターンなのかは劇場でご確認いただきたいのですが、ドラマ全体が心地よい緊張感に貫かれておりまして、主人公と一緒にだまされながら楽しんでしまいました。結局最後まで主人公はお人好しのまんまでだまされっぱなしなのが可笑しかったです。
ープニングから、何やら変なところがクローズアップされ、何だか、不自然な印象を受けるのですが、どうやら伏線への目配せのようでもあり、ひょっとしたら単なるハッタリかもしれないと思わせるところもあり、のっけから気が抜けないという感じです。主人公のジョーが何だかだまされているような気もするのですが、その実体がわからない、観客は常にジョーの一歩先を読みながら展開を見ているのですが、結局ジョー同様にだまされてしまう、その騙され加減を楽しむ映画と言えます。特にジョーが反撃に出られそうで出られないというのがおかしかったです。キャンベル・スコットの坊ちゃん坊ちゃんしたキャラクターがこの映画にうまくはまりました。
の役者も有名どころは少ないのですが、胡散臭いメンツを揃えて楽しませてくれます。ベン・ギャザラの奥行きがあるのかないのかよくわからない演技、スティーブ・マーティンが見せる底の見えないハッタリ、またレベッカ・ピジョンという女優さんが見せるかわいいけど怪しいキャラクター作りなど、観客をうまくミスリードして主人公同様、途方に暮れさせてしまいます。一体、ジョーの味方は誰なのか、このあたりの面白さはミステリーファンにはかなりうれしい趣向になっています。
た、全ての展開に納得が行くように作られているのは、脚本と監督が同じ人物だからでしょうか。思い返した時に物語に破綻がないというのはなかなかすごいことだと思います。変な例ですが、ヒチコックの「サイコ」ですら辻褄的には反則すれすれのことをやってますし、あの快作「ユージュアル・サスペクツ」でも映画の作り手が観客を騙すという視点がミエミエでした。しかし、「スパニッシュ・プリズナー」では映画の作者が観客を騙すことはしません。実際には虚偽の回想シーンを本物のように見せたりするテクニックは使わず、あくまで主人公の視点で、事実を淡々と積み重ねて、彼の視野の外に隠された事実があるという作り方をしています。ですから、主人公ほどお人好しでない観客は、何かおかしいと怪しみながらも、主人公と同じ気分を味わうことになります。
半は主人公がだんだんと追いつめられていくのですが、このあたりもあまりシリアスでなく、どちらかというとゲーム感覚的な軽さがあります。設定、及び事件の展開は、かなりシリアスなのですが、それがどことなくコミカルで軽妙な印象を持ってしまうのは、キャンベル・スコットのふわふわとしたキャラクターのおかげでしょう。この映画と同様の、いわゆる主人公騙されまくり映画の「ゲーム」が、マイケル・ダグラスのキャラクターの重さによって、シリアスさが前面に出ていたのと比べると、こちらは、最初からライトな味わいがあります。そこがこの映画のよさでもあり、「ゲーム」と一線を画すところでもあります。
ラマ自身に仕掛けを施して、観客を騙そうという趣向ありませんので、純粋に、主人公と周囲の人間の知恵比べを楽しめる映画になっています。「ファーゴ」のカーター・バーウェルによる不安な音楽とか、「黙秘」のガブリエル・ベルステインによる不思議なカメラワーク(これはマメットの演出かも)がミステリーの面白さをサポートしています。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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不思議なテンションの高さが魅力です。
このラストには観客も主人公も唖然。
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