夢inシアター
みてある記/No. 145

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エネミー・オブ・アメリカ
エネミー・オブ・アメリカ

- Enemy Of The State -

テンポよくまとまったサスペンスアクション、強引なラストがなかなか。

1999.5.3 静岡 静岡オリオン座 にて


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「通
信システムの保安とプライバシー法案」なる、成立するとちょっとやばい法案をめぐって下院議員が殺されます。偶然にその現場を撮影したビデオを犯人たちは追いかけていたのですが、敏腕弁護士ディーン(ウィル・スミス)が偶然その争奪戦に巻き込まれてしまいます。犯人はアメリカのNSAという特殊機関の連中で通信衛星、電話回線などあらゆるメディアを操る立場の連中です。ディーンは連中の罠にはまって、金も地位も妻の信用も失ってしまいます。彼は情報屋のブリルという男を味方につけようとするのですが、敵の機動力と情報能力に太刀打ちすることはできるのかしら。

っけから、ジョン・ボイトとジェーソン・ロバーズという重厚な役者対決があってなかなか期待させられます。その後も、主人公を巡る追跡劇が常に現場以外の誰かがモニターしているというのが、スピーディでスリリングな展開を生み、トニー・スコットの演出はいつもよりも速いテンポで2時間余を一気に突っ走ります。また主人公を追いかける顔ぶれにエリート風のメンツをそろえているのもなかなかの見物でして、悪役だけど単なる悪党とは言いがたいものがあります。この類の映画ですと主人公の周囲にいる人間は片っ端から殺されてしまい、追手は時と場所に関係なく銃を撃ちまくるなんてのが多かったのですが、今回はそこまでムチャはしない分、犠牲になった人間に対する主人公の悲しみと怒りが際立ちました。

人公のウィル・スミスは完全に巻き込まれ型のヒーローなんですが、敵方の追跡装置をなめてかかっているのかドジを踏んでばかりいます。もう一人の主人公のジーン・ハックマンはいつ出てくるのかとシビレを切らしたころにやっと登場します。今度のハックマンはプロフェッショナルでかっこいい役になっていますが、ウィル・スミスに足を引っ張られてばかり、そんなスミスがラストで起死回生の大逆転を見せるのが見物です。ただ、シリアスなハイテクスリラーで前半から中盤まで通してきたのですが、この決着の付け方はそれまでの流れからすると随分と毛色の違う荒っぽい展開です。スコットがここでも緊張感ある演出を見せたおかげで、何とかエンディングを迎えることができるのですが、随分と人を食った仕掛けになっています。

れなりのリアリティをもったスリラーということもできるのでしょうが、ウィル・スミスのキャラクターからか、怖さよりもアクションが先行していると印象でした。とはいえ、この主人公が奥さんにガンガン言われてシュンとなっちゃうあたりのおかしさとか、悪役であるボイトも奥さんに頭が上がらないとか、ハックマンが飼い猫を妙に大事にしているとか、キャラクターに一癖持たせているのが、ドラマの奥行きというよりは娯楽映画としての余裕を感じさせ、アクション一辺倒の映画にならなかったあたりが、演出のうまさなのでしょう。また、アクションと言ってもカーチェイスや銃撃戦よりも、ひたすら走って逃げるのを追いかけるというパターンになっているのが面白いところです。

者では、主人公を追いかける脇の面々がどこかで見たような顔が並びまして、その中では、「ガタカ」のローレン・ディーンのエリート悪役ぶりが結構カッコよくきまりました。また、出番は少ないながら、トム・サイズモア、ガブリエル・バーンといった名脇役を要所要所で効果的に使っていますし、久しぶりのリサ・ボネットのいい女ぶりが印象的でした。

ころでこの映画、アクションもので有名なジェリー・ブラッカイマーのプロデュース作品なんですが、「コン・エアー」「ザ・ロック」のようなパワフルだけど大味な映画が多い印象があります。今回は一見力技だけの映画に見せておいて、その実は小技の積み重ねと役者で見せる映画になっているのが意外でした。正義とか大義名分にこだわらないで、悪者との対決を描いているのですが、これひょっとしてブラッカイマーの路線変更なのかもしれません。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 よく考えると相当怖い設定ではあるのですが。
ラストの強引さが娯楽映画のお約束。
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