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Ever After
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今度のシンデレラは気はやさしくて力持ち、でも怒らせると怖いぞよ。
々あるところにダニエル(ドリュー・バリモア)という娘がおりました。父親はロドミラ(アンジェリカ・ヒューストン)という子連れ男爵夫人と再婚するのですが、その直後に急死。年頃になったダニエルは今やロドミラと二人の娘の召し使い状態。一方この国の王子様は政略結婚を強いられて、王宮から抜け出してばかり、ある日この王子がダニエルの家の馬を盗んだことから、二人は出会います。そして、偶然はその後も二人を巡り合わせ、王子はダニエルの知性とやさしさにひかれていきます。しかし、ダニエルは召し使いの身ですから伯爵夫人だった母親の名を彼に告げます。一方ロドミラは彼女の上の娘を王子の妃にしようと画策しています。果たして身分違いのこの恋は成就するのでしょうか。
ープニングで老婦人(ジャンヌ・モロー)がグリム兄弟を呼んで、「シンデレラ」ってのはこういう実話がもとなんだよと語り始めます。お転婆娘のダニエルが父親の死後、継母や義姉たちに召し使いのように扱われています。でも彼女はそんな境遇に負けないタフな娘、例え王子様でも馬泥棒にはリンゴつぶての一撃でノックアウト。でも、一方でリベラル志向でかつ読書家、お坊ちゃまで頼りないことこの上ない王子様にきっちり意見してしまう知性と心臓の持ち主です。これだけなら、気の荒い身の程知らずの田舎娘で終わってしまいそうなのですが、これがかわいいんですよ。根性の悪い義姉はいわゆる美人なんだけど、ダニエルの方はタヌキ顔(バリモアファンの方ごめんなさいね)だけどチャーミング、笑顔がキュート。彼女のキャラクターがこの映画を支えていると言っても過言ではないくらいのはまり役になっています。
ンデレラのお話って子供のころ読んだ絵本のレベルしか存じ上げないのですが、たしかヒロインは健気で奥床しくって、忍耐強い、ガマンの「おしん」タイプだったように思いますが、このダニエルは自分の運命を自分で切り拓いていく現代風の女性になっています。義姉が王子の妃になって、継母一家が王宮へ引っ越してくれたらせいせいするのにと口に出して言ってしまうオープンなキャラクターです。また、彼女は孤独でもなく、他の使用人たちからの信用も厚く、幼なじみの男の子を子分みたいに従えています。そんな彼女に、世間知らずの王子様が参ってしまうのも、さもありなんという気がします。とはいえ、義理の娘で使用人という複雑な立場のためそれなりに風当たりも強いです。さらに、ロドミラ母娘にとって、玉の輿に乗るための障害が自分の召し使いだったと知った日には相当えぐい手段に打ってでます。
んな母娘に負けずに一矢報いようとするダニエルですが、このあたりまた単細胞お坊ちゃまの王子に足を引っ張られるあたりが何だか笑えてしまいます。一応ハッピーエンドには向かうんだけど、まあ、ええとこのぼんぼんが、しっかり者の嫁を取ったと思えば、一応は「めでたしめでたし」の気分です。シンデレラの映画のお約束のガラスの靴は一応は登場しまして、物語のキーとなっています。また魔法使いの役に何とレオナルド・ダ・ビンチを持ってきたのにも笑ってしまいました。このあたりのお遊びが、なかなかセンスよく決まっているのですよ。
リュー・バリモアがキュートで気丈なヒロインにぴたりとはまり、ほとんど彼女一人で映画一本を支えているという印象でして、特にラスト近くの意表を突いた展開(これも笑えるのですが)は彼女のかわいいだけじゃないキャラクターがうまく生きました。彼女の魅力を生かすための物語と言っても過言ではなさそうです。その一方でアンジェリカ・ヒューストンの継母がおとぎ話そのまんまのキャラクターを丁寧に演じて、ダニエルの現代的なヒロインを引き立てました。個性の強い彼女がポワンとしたヒロインの引き立て役をきちんと演じきるあたりに、役者の力量を感じてしまいました。観客に妙なシンパシーを起こさせず、笑いをとりながらも悪役を演じきるあたりは、大したものだと感心してしまいます。また、義姉の下の娘が美人じゃないので、母親に冷遇されてしまって結局ダニエルサイドについてしまうってのがおかしかったです。
ネスコの画面と色彩の美しさが、いかにも、おとぎ話という世界を作り出していますし、ジョージ・フェントンのクラシカルな音楽も落ち着いた雰囲気を醸し出していますけど、脚本と演出は全体をテンポよく軽いタッチでまとめあげました。おとぎ話の元ネタは実話だったという物語(フィクション)という構造が、ファンタジーもリアリティも容易に受け入れやすくしています。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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元気のない人におすすめのちょっといい話。
王子様の印象がめっちゃ薄いんだけど。
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