クレヨンしんちゃん、温泉わくわく大決戦
クレヨンしんちゃん、温泉わくわく大決戦
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ガキねたとオヤジねたが混在してる不思議なエンタテイメント。
る日、野原しんの助一家がまるごと拉致されてしまいます。彼らをさらったのは温泉の平和を守る温泉Gメンですって(なんじゃそりゃ)。彼らは「YUZAME」という風呂嫌いのボスのいる秘密組織(なんだってんだよそりゃ)の陰謀を粉砕するために、金の魂の湯ってのを探していて、その湯脈が野原家の真下にあるんですって。一方「YUZAME」は巨大ロボットを使って地球丸ごと温泉計画を企んでます。そんな世界的陰謀に巻き込まれてしまった、野原一家、今回ばかりは、相手がでかすぎるんでないかい?
レヨンしんちゃん」の劇場版を映画館で観るのは初めてだったのですが、評判がいいのと、先日テレビ放映された「ブタのヒヅメ大作戦」がすんごく面白かったもので、思い切ってウィークデーの真っ昼間に映画館に足を運んでしまいました。最初の短編「メイド・イン・埼玉」がショートコント集みたいなもので、まずこれがムチャクチャ笑えました。特に便秘スッキリの気分で街中巻き込んでミュージカルになっちゃうのには大笑いでした。また、「不思議な国のアリス」のパロディもオチのおかしさが絶品でした。ひまわり(しんちゃんの妹ね)の一人称視点のエピソードも楽しい趣向でした。
て、本編の「温泉わくわく大作戦」ですが、今回は舞台を埼玉県を限定した怪獣スペクタクル、最後ファンタジーという一篇です。冒頭に唐突登場する丹波哲郎(声も本人)になんじゃこりゃの気分にさせられるのですが、後半で正体を見せてまた「何じゃそりゃ」の気分にさせられます。前半は今一つテンポがよくないという印象でして、大丈夫かなあって気がしていたのですが、巨大ロボットが街を破壊し始めるあたりから、物語がのってきます。前半は、大宮の路地裏を舞台にしたアクションはさすがお見事な動きを見せてくれるのですが、後は視覚的な面白さが今イチでした。奥秩父から巨大ロボットが現われて街を破壊しながら、野原家へ向かうという展開は、あきらかに「ガメラ」シリーズの頂きでニュース番組や避難民の描写の妙なリアルさが笑えます。でもこのあたりのおかしさは小さな子供にゃわかんないよなあ。自衛隊の戦車隊が「怪獣大戦争」のマーチを鳴らしながら進軍すれば、巨大ロボットは「ゴジラ」のテーマを鳴らして応戦するというギャグは明らかにオヤジ狙いだと思うぞ。
ライマックスは、温泉の精が出てくるは、野原一家が変身しちゃうはなかなかに先の読めない強引な展開を見せてくれます。そして、さらに強引に家族愛にまとめてしまうあたりの力(ちから)ワザはなかなかあなどれません。今回は、野原一家のマイホームが崩壊のピンチに立たされるということで、一家が一丸となって「YUZAME」に闘いを挑むという設定ですので、いつものバカ一家のキャラはちょっと薄めになっています。一方、温泉Gメンとか「YUZAME」のボスなんて、しんちゃんと互角かそれ以上のキャラになっていまして、そのアホさ加減が際立ちました。特に「YUZAME」のボスがどうして風呂嫌いになったかというエピソードがものすごくて、それを聞いた敵味方共に引いてしまうというのが、おかしかったです。
ういう映画がお子様向けに作られていることは間違いはないのですが、なのに子供に媚びていないあたりがちょっと不思議な好印象でした。あくまでドラマは日本の一家族のレベルを逸脱しないで、周囲がはちゃめちゃなエスカレートしていくというのはアイデアとしてはうまいと思います。ちょっと個性のきつい野原一家が、そのはちゃめちゃな設定の中で段々とヒーロー、ヒロインになっていくあたりのうまさが見事で、観客の世代の各々がしんちゃん、パパ、みさえに感情移入できるように作られているあたりが面白さの秘密なのかなとも思ってしまいました。
ニメというのは、「もののけ姫」しかり「アキラ」しかり、海外でも評価される日本の文化ではあるのですが、ここでは徹底してコテコテの日本にこだわっているのがうれしいと思います。風呂好き、銭湯好き、温泉好きの日本人の感性に一番合うように作られているのが潔いのですよ。アニメがワールドワイドでオープンなメディアだと思ったらとんでもない、こういう日本文化限定、エリアは埼玉限定という設定できちんと娯楽アニメが成立しているのです。
だか理屈っぽくなってしまいましたが、中身はバカで楽しい娯楽映画になっていますし、家族愛の映画にもなっています。テレビほど困ったガキじゃないしんちゃんの冒険にドキドキハラハラして最後に大笑いするのもたまにはいいかなって思いました。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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子供連れで観る時、童心に戻らなくても楽しめます。
でもオヤジ一人で観るのは恥ずかし気分。
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