よくできたスリラー、役者と仕掛けで見せます。
1999.4.17
東京 丸の内ピカデリー2
にて |
学教授のマイケル(ジェフ・ブリッジス)は、FBIエージェントの奥さんを仲間の不手際から失っています。彼の専門はテロリズムでその授業には死んだ奥さんの影がつきまとっているようです。そんなある日、向かいの家の子供が大怪我をしたのを病院に運び込んでから、その両親との交際が始まります。一家の主人オリバー(ティム・ロビンス)は建築士とのことですが、どうも様子がおかしいです。不審に思ったマイケルは、オリバーの事を調べ始めると、どうやら彼が死んだ人間の名前に改名しているという事実に突き当たり、何かあるとにらみ始めますが、だからって、それが何だっていうの??
かいの家の家族と付き合うようになった主人公、最初は息子に友達ができたし、よかったよかったと思っていたのですが、何となく疑惑の念が持ち上がってきます。なぜ、こいつは自分の過去を隠すのか、それ以上のものを今も隠し持っているのではないかと。そういう疑惑にとりつかれた主人公がだんだんと自分で自分を追いつめていってしまうあたりを、ジェフ・ブリッジスが熱演しています。妻の死がマイケルに正常な状況判断を失わせているように見える一方、オリバーも何だか怪しげなオヤジです。ティム・ロビンスは終始ポーカーフェイスで謎の人物を演じきりました。でかい図体に、童顔という彼の見た目が、この映画にミステリアスな味わいを与えています。そして、その謎の人物の奥さんや子供まで怪しく見えてくるあたりは、マーク・ペリントンの演出が冴えます。この人はMTV出身の人だそうですが、派手な絵作りをせず、じわじわと追いつめられる主人公の表情を丁寧に追っていきます。後半、サイコホラー風の展開になってくると、凝った画面設計もしてますが、全体としては渋い印象の作品にまとまりました。
半の意外な展開は劇場でご確認いただきたいのですが、アーレン・クルーガーの脚本は、丁寧に伏線を張り巡らせていますので、ひょっとしたら中盤あたりで結末が読めてしまうかもしれません。とはいえ、なかなかに怖いオチをつけてくれる映画です。多少、無理な設定もあるのですが、そこはペリントンの演出がうまい畳み込みを見せて、約2時間を一気に見せてくれます。まあ、あまり後味すっきりという類の映画ではないのですが、ミステリーのファンの方なら、かなり楽しめるのではないでしょうか。
イケルの大学での講義内容がなかなか面白かったです。テロなんかで、無差別爆弾事件が起こったとき、大衆は、犯人が誰かとわかり、その犯人と目される人物が逮捕されるか死亡すると安心するというのが印象的でした。テロリズム全体として考えれば、危機が回避したとは言い難いのに、そこで犯人がわかるとなぜかほっとしてしまう。爆弾犯人ではないのですが、JFKを暗殺犯とされたオズワルドなんてのも、そういう一種のスケープゴートだったのかなという気がします。彼がいたから、世間がある程度落ち着いたということです。逆に言えば、社会不安を拡大しないためには誰でもいいから犯人に仕立ててしまう必要が出てくるかもしれないのです。これはかなり怖いです。
た、マイケルの講義の中に出てくる、「FBIの捜査の初歩的なミスから子供が犠牲になる」という痛ましいエピソードも印象的でした。このあたりの見せ方はかなりショッキングで、子供が射殺されるシーンをストレートに見せるあたり、ハリウッド映画の定石を逸脱しています。これらの講義内容、そして描写の掟破りも、ラストへの伏線となっているあたりは、巧妙なドラマ作りと申せましょう。
ンジェロ・バダラメンティの音楽はシリアスなドラマ音楽と、無機質的なシンセサウンドをうまく使い分けました。トマンダンディとかいうユニットが追加音楽を書いているということなので、無機質なシンセ音楽はそちらの担当だったのかもしれません。ボビー・ブコウスキーの撮影は、シネスコ画面の上下が狭苦しいという印象を受けるシーンが多かったので、スーパー35方式による、スタンダードサイスからのトリミングではないかと思われます。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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観終わって元気になるような映画じゃないです。
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