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Stepmom
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実の母と新しい母の愛と感動のドラマ、て言うかー、この映画かなりマジです。
ザベル(ジュリア・ロバーツ)の恋人は子持ちバツイチの弁護士ルーク(エド・ハリス)です。彼のアパートに住むようになったものの、娘と息子はまるでなついてくれません。母親ジャッキー(スーザン・サランドン)にべったりの子供たち、そりゃあ母親の経験もないイザベルは、ジャッキーのようにはいきません。でも時が解決してくれることもあります。少しずつ、それぞれの努力が皆の関係をよい方向へと向かわせ始めるのですが、ジャッキーの体が病魔に侵されてしまいます。イザベルはどう転んでも母親としてはジャッキーにはかなわないし、ジャッキーもイザベルもそれは承知、でも子供たちの幸せを望むところには違いはないみたい。果たしてこの5人の家族は一つになることができるのでしょうか。
セス・ダウト」で家族の絆をコミカルにまとめあげたクリス・コロンバス監督の新作ということで、アットホームなファミリー映画かと思っていたのですが、これが結構シリアスで、ヘビーな内容になっています。要所要所にコミカルな味わいもあるのですが、扱っているテーマは「死」「確執」といったもので、登場人物の細やかだけど厳しい書き込みぶりはなかなかに見応えがありました。主演二人の憎しみ、嫉妬、孤独といったものを容赦なく描写していまして、アメリカ版「渡る世間は鬼ばかり」の趣すらあります。また、子供たちが見せる、父の恋人への拒絶反応、そして少しずつ馴染んでいく過程もじっくりとエピソードを積み重ねていてなかなかにリアルです。
ュリア・ロバーツは主演ではありますが、今回は押さえ気味の受けの演技に徹して、一方のスーザン・サランドンの押しの演技とのバランスを取っています。ところがこれが、ロバーツを非常に好感度が持てるキャラクターにしています。ふーん、こういうジュリア・ロバーツもいいなあって気がしましたもの。女流カメラマンとして現場ではバリバリのキャリア・ウーマンの彼女が、子供たちの母親の立場になると不安と苛立ちに振り回されてしまう、最初のうちは、そういう彼女をざまあ見ろの気分でながめていたサランドンが、自分の病の進行とともに変わっていくあたりが見物です。後半、二人のヒロインが、自分の胸の内を語り合うシーンが圧巻です。
ランドンにしてみれば、新しい母親は頼りないし子供たちも嫌ってるんだから、自分の優位は揺らぐことはないと思っています。ところが、時間は少しずつ新しい親子の関係を作り始めます。それを見て嫉妬と安堵の入り交じってしまう彼女に、共感を憶えてしまいました。子供たちがあの女を嫌っているから、私は子供たちを守らなければならないという信念が、実は自分のエゴかもしれないと気付く心の揺らめきは、さすがに名女優の貫禄で見せます。
ド・ハリスは、二人の母親の間で、どうしようもなく無力な父親を好演しました。子供たちの理屈からすれば、両親の離婚、そして新しい女性との結婚は身勝手にしか見えません。でも、もと妻と元のさやに収まることは不可能ですし、若いイザベルを愛する気持ちはホンモノです。そんな現実をうまく子供たちに伝えきれないあたり、なまじ善意のキャラクターだけにその無力感が際立ちました。また、二人の子供たちも単にかわいいだけじゃない奥行きのあるキャラクターになっています。それにしても、子供たちが母親への死の宣告を正面から受け止めて、乗り越えていかなければならない文化ってもなかなかにハードだなあって感じてしまいました。
ストのクリスマスの朝のシーンは、ちょっとドラマの要素を盛り込みすぎた感もありますが、最後の最後で泣かされてしまいました。完全なハッピーエンドとは言い難いですけど、これが最良の結末なんでしょう。お互いを想うことに懸命な彼らファミリーの姿に、感動というよりは、ジーンときてしまいました。シネスコの大画面をきっちりと埋めたドナルド・マッカルパインの撮影、そして、クラシカルなオーケストラ音楽でドラマを厚みを与えたジョン・ウィリアムスの音楽などの好サポートも見逃せません。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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甘くない映画ですが、後味がじわじわと効いてきます。
誰も共感し共有しうる痛みの物語。
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