夢inシアター
みてある記/No. 137

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フリーマネー
フリーマネー

- Free Money -

映画は一癖あるコメディ、でもそれ以上にハッタリ宣伝文句は何のつもり?

1999.4.3 東京 渋谷シネパレス にて


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務所長スウィード(マーロン・ブランド)はなかなかの悪党で、極悪囚をわざと脱走させて撃ち殺して嬉々とするやな奴。こいつにどういうわけかかわいい双子の娘がおりまして、各々の彼氏に妊娠したと嘘をついて結婚まで話しを持って行ってしまいます。まだ学生の小娘に振り回されて結婚したのが、バド(チャーリー・シーン)とラリー(トーマス・ハーデン・チャーチ)というぱっとしない連中。幼な妻たちにせがまれて父親の家に住むことになるのですが、これがまた地獄の生活。一方、刑務所で発生した脱走犯射殺事件に疑問を抱いたFBIのポラスキー捜査官(ミラ・ソルビーノ)が捜査に乗り出すのですが.......。

場で売っていたパンフ(実はプレスシート)のトップは、ミラ・ソルビーノが銃を構えたアップでして、謳い文句が「10億ドルを奪回せよ! FBI捜査官が現金輸送列車強奪事件を追う! 現場は彼女の生まれ故郷だった....」あと、この中にも映画の紹介が書いてあるのですが、「自分の勘と唯一信じられる銃だけを頼りに、誰の力も借りずに恐怖と謎に彩られた巨大な犯人を追いつめた!」「ファーゴ、LAコンフィデンシャル(中略)を流れとしてアクションのニュー・ジャンルを確立したクライム・アクション、そのエポック・メイキングとしての楔を打ち込んだ問題作フリーマネーがいよいよ登場する。」いやー、久々に大ハッタリの大ウソ野郎の登場です。もし、この映画を御覧になる方がいらっしゃったら、このプレスシート、400円もするのですが、是非買って頂きたいです。そして、実物とのギャップに大笑いして頂きたいです。今時、こんな大ハッタリをかますあたり、配給会社の開き直りのオアソビが伺えて楽しくなってしまいます。

ゃあ、中身の映画はどういうものかというと、マーロン・ブランドを中心にドラマは展開していきます。彼の義理の息子になったばかりにヒイヒイ言わされてる田舎青年二人が、現金輸送列車強盗を企み、それをドジを重ねながら何とか成功させるのですが、結局義父に目をつけられてしまい、片方は刑務所に入れられてしまいます。そして、もう片割れが何とか脱獄させようとする.....なんて書くと一応犯罪アクションのようにも見えるのですが、全体はオフビートなコメディ仕立てで、ミラ・ソルビーノは、刑務所長の悪行を暴こうとして彼を追うという脇役の一人なのですよ、これが。ですから、全編に渡って登場するのは、ブランドの貫禄のあるアホと、娘婿コンビの情けないアホの闘い(?)ということになります。それも、カナダの田舎町が舞台ですから、何だかノンキな雰囲気です。あこぎなことをやる悪党ブランドもどうにもユーモラスで、こいつが「恐怖と謎に彩られた巨大な犯人」にはどうにも見えません。

「マ
ザーズ・ボーイ」のイブ・シモノー監督は、コメディは得意ではないのか、細かいくすぐりはあちこちに散りばめてあるのですが、あまり笑いまで盛り上がるところがありませんでした。もし万が一宣伝文句にあるとおり、「クライム・アクションのエポックメイキング」のつもりで作ったのだとしたら、大マヌケってところですけど、映画を観た印象の犯罪コメディという点からすれば、そこそこの出来といったところです。情けないコンビのさらに情けない方を演じるトーマス・ハーデン・チャーチがなかなかに達者なところを見せて印象的でした。また、この映画に不思議な味わいを与えている双子姉妹は新人だそうですが、人を食ったキャラクターが映画の狂言回しになっています。

ータルな印象は、お気楽小品なのですが、なぜか、重厚脇役のドナルド・サザーランドとマーチン・シーンが登場するのです。それも特に必然性のない登場なのが、何だか妙な印象です。妙と言えば、音楽を担当しているのが、ごひいきマーク・アイシャムなのですが、今回はカントリー風音楽で、いつもの彼らしいジャズタッチもニュー・エイジっぽいところも微塵もありませんでした。何だか不思議で妙でツボを外した映画です。ビデオで観ると「何じゃこりゃ」って気分になるかもしれませんから、そういう意味では劇場で御覧になることをオススメしておきます。それもポスターやプレスシートの宣伝文句と比べながら御覧になると余計目に楽しめるのではないかと思います。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
△ 2点2点1点0点0点 ソルビーノが「リプレースメント・キラー」位カッコ良ければ。
プレスシートの解説はホント傑作よ。
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