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Hope Floats
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ちょっといい感じのホームドラマ、サンドラ・ブロック版「ため息つかせて」。
レビのトークショーに呼ばれたバーディ(サンドラ・ブロック)は、隣に親友がいてビックリ、さらに彼女が、バーディの夫と不倫中だと告白し、さらに夫がその場に登場して、それを事実と認めてしまいました。まさに、彼女にとっては晴天の霹靂です。娘を連れて実家に帰るバーディを母親のラモーナ(ジーナ・ローランズ)は暖かく迎えます。娘はパパが恋しくてたまりませんが、バーディの心の痛手はそう簡単に癒せません。幼なじみのジャスティン(ハリー・コニックJr)が彼女にモーションをかけますが、バーディはそんな気分になれないし、娘は彼が大キライです。彼女が果たして立ち直ることができるのでしょうか。
話の発端はテレビのトークショー、そこでとんでもない告白をされてしまって、主人公のバーディはメロメロです。前半のサンドラ・ブロックが、まるで見た目がヨレヨレなのが見物です。外へも出ないで、ローブ姿で一日中家に閉じこもってます。そして、母親と娘の両方からたしなめられて働きに出るようになるのですが、周囲はテレビの一件をみなご存知で今一つ居心地のよくない思いをするヒロインがちょっと気の毒な感じです。でも、その一方、彼女がどんな人間かもわかってきます。昔は高校の女王で、フットボールの花形と結婚したいわゆる田舎のスターなのです。多分、それなりタカビーなやな奴ではなかったかという気がするのですが、そんな彼女が帰ってきた故郷で新しい人生への一歩を踏み出すことになるのです。
ンドラ・ブロックという女優さんは、「スピード」にしても「あなたが寝てる間に」にしても、都会のそんじょそこらのネエちゃんというキャラクターがうまくはまっていたのですが、今回のもと田舎町のクイーンというのも実に見事にきまっています。きれいなんだけど、どこか垢抜けない子持ちの主婦というキャラクターを見事に演じています。「ため息つかせて」でも細やかな演出を見せたフォレスト・ウィテカーは、ここでも、特別じゃない普通の女性の機微をていねいに積み上げていきます。夫に一生添い遂げるつもりでいた彼女が、職安でタイプもコンピュータも出来ないと言うあたりのみじめさもきっちり見せますし、裏切られたことへの恨み言を言いながらも、そのダンナを忘れられないところまで見せるあたり、単に女性の自立を描いたドラマではありません。
まりタフじゃない普通のヒロインの葛藤は、共感できるところが多かったです。親友に浮気されるは、娘は浮気した亭主サイドについちゃってるし、自分に言い寄る男は自分と同じ負け犬Uターン組だし、何だか彼女の周りにはロクなことがありません。ところが、ドラマはそれらのトラブルに対しても視線が暖かいのです。本当ならサイテーの敵役になる筈のヒロインの夫ですら、悪役として切り捨てていません。だからこそ、ヒロインの痛み、娘の痛みが観客にも身近な形で伝わってきます。娘を演じるメイ・ホイットマンの小憎らしいけど応援したくなる好演ぶりが、このドラマにシビアさと暖かさの両方の奥行きを与えています。
ラマチックな展開はありませんので、盛り上がりに欠けることは事実ですけど、細やかなエピソードの積み重ねが後味の良い仕上りになっています。登場人物の各々が見せる微妙な表情の変化、感情の揺らめきといったものを堪能できる方にはおすすめの一本です。役者のうまさが光りますし、ケイレブ・デシャネルの暖色系を主体にした撮影や、控えめにドラマをサポートしたデーブ・グルーシンの音楽の良さもあってなかなかに見せる佳作です。予告篇で観た時は、「何だか恋愛モノみたいだけど、つかみどころがないような映画だなあ」という印象であまり期待していなかったのですが、本編を観たら、その「つかみどころのなさ」こそがこの映画の魅力だということに気付きました。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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人によっては退屈かも、でも私は好きです、こういうの
ジーナ・ローランズがうまいです。
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