夢inシアター
みてある記/No. 132

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スネークアイズ
スネークアイズ

- Snake Eyes -

ブライアン・デ・パルマの映像マジック、ストーリーがもう少し弾めば。

1999.3.20 東京 銀座東劇 にて


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の晩のボクシングのビッグカード、地元刑事のサントロ(ニコラス・ケイジ)は、そこでかつての友人ケビン(ゲイリー・シニーズ)に会います。その試合の観客の一人である国務長官の警護の責任者であるケビンが、試合中に席を外したちょっとの間に謎の女が国務長官に何かを渡し、その直後、長官と謎の女はどこからか狙撃され、長官は危篤状態、腕を撃たれた女は姿をくらまします。狙撃者はケビンによって射殺されるのですが、警護責任者としては大失態です。アタフタするケビンにサントロは捜査の協力を申し出るのですが、この裏には結構大きな陰謀があったのですよ。

ライアン・デ・パルマというと、ヒッチコックの物まね監督として有名ですが、「カリートの道」ではシリアスドラマに、映像テクニックをうまく融合させ、「ミッション・インポッシブル」では正統娯楽映画に手腕を見せた監督でもあります。今回も、のっけから13分1カットという離れ業を見せてくれますし、色々と視覚的な仕掛をこらして楽しませてくれます。予告篇でも「見るもの全てを信用するな」「1万4千人が目撃者だ」というコピーが印象的で期待させていたのですが、その分のモトは取れる映画になっています。

件の発生から、その捜査活動まで、サントロの動きを中心に追うドラマはなかなか快調です。視点を変えた回想シーンが登場し、その中にもトリックが潜んでいるというあたりが面白いのですが、ちょっと反則という気もしてしまいました。また、ボクシング会場の群衆シーンをシネスコでとらえた映像の迫力、スプリット・スクリーンによるサスペンス効果、テレビのモニター画面の荒れた映像が、クリアなフィルム映像に切り替わるタイミングのうまさなど、見て楽しい趣向があちこちに仕掛けられています。

員のアリーナで起こった国務長官狙撃事件、そして、目撃者は1万4千人と何台ものカメラです。サントロはヤクザの金をせびるは、賄賂はとるはのとんでもない警官なのですが、この事件の裏に何らかの陰謀の影を感じ取ります。かつての親友ケビンが窮地に立っていることからも、何とかしてやろうと動き出すのですが、その行動が自分の命すら危うくしていきます。オープニングでやたらハイテンションで登場するニコラス・ケイジが、事件の進展に伴って、段々とシリアスキャラクターに変わっていくのが面白いところです。ただ、冒頭の登場シーンがハイテンションな悪徳刑事なので、感情移入しにくい主人公であることも事実でして、エピローグあたりで何だかちょっと気の毒なオヤジくらいにしか見えないのが、惜しいところです。そこがまた監督の狙いだった可能性はありますが。

のサントロという刑事のキャラクターが、普段はチャランポランなのに、いざとなると堅物になるという、あんまり実在しそうもないキャラクターになっているのは、ご愛敬ですが、そのサントロがたどり着く事の真相が物語の中盤でほぼわかってしまうあたりから、映画も残念ながら失速し始めます。特にクライマックスの慌ただしさは、視覚的には面白い趣向もあるのですが、もっと盛り上げて欲しかったところです。特に組織的な陰謀があんな決着で済むはずがないと思わせてしまうのは失敗でしょう。全体に視覚的な仕掛けに合わせて物語を構築していったような節があり、ストーリーとしての詰めが甘くなってしまったようです。おかげで、折角の脇の面々(スタン・ショウ、ジョン・ハード、ケヴィン・ダン)もうまく使われていないという印象になってしまいました。そんな中で、不思議なポジションの謎のヒロインを演じたカーラ・グジーノが印象的でした。

本龍一が音楽を手がけているのですが、ここでは非常にオーソドックスなシリアスドラマの音作りをしています。ストリングスの使い方などは、デ・パルマ監督との往年の名コンビ、ピノ・ドナジオの音を思い出させます。ただ、仕掛け優先でドラマがイマイチの部分を音楽がずいぶんと救っているという印象でした。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 ラストのワンショットは一体何のつもりだったのか?
これは見るための映画、ビデオではちょっと....
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