あの「リング」の続編なのかな。かなり別モノの味わい。
1999.3.11
神奈川 川崎チネチッタ2
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作の最後に見つかった山村貞子の死体ですが、どうも死後1,2年しか経っていないらしいんですって。でも井戸は30年前に封印されていたのに。一方、恩師高山竜司(真田広之)の異常死の原因を調べようとした高野舞(中谷美紀)は、浅川母子が行方不明だと知らされます。そして、ビデオを見て異常死した女の子の死の現場に居合わせた少女を訪ねるのですが、そこで少女が念写能力を持っていることを知ります。さらに少女に手を握られた舞は、彼女の記憶を体感します。どうやら、舞にも高山と同じ能力が備わっているようです。そして、舞は街で偶然浅川母子に出会います。息子の陽一にはあれ以来、特殊な能力が備わってしまったようなのです。舞の周囲では、貞子の影がつきまとい、舞と陽一は再び大島へと向かいます。彼らは貞子の呪縛から逃れることはできるのでしょうか。
作の「リング」は怖かったです。「呪いのビデオを見ると一週間後に死ぬ。」「ビデオを見ても死なない方法が一つだけある」という二つの都市伝説(言い方を変えると基本のルール)を背景に、その発端にあると思われる山村貞子なる女性の謎に迫るというストーリーでしたが、結局、全貌の解明にいたらないで終わり、都市伝説だけは連鎖し続けるという結末はなかなかにぞっとさせるものがありました。また、仕掛けられたショックシーンのインパクトも相当なもので、観終わって、家に帰ってテレビの砂の嵐を見てぞっとし、スイッチを切ったあとのブラウン管に写る自分の背後にまたぞっとするという、後を引くホラー映画になっていました。この怖さは、結局説明がつかない二つの都市伝説が、厳然としてそこにあるという、つかみどころのなさが怖かったのではないかと認識しています。この世には、理屈じゃない得体の知れないものがあるというのは、何となくわかります。その部分を拡大して見せた「リング」は映画そのものがスクリーンを飛び出して、観客の生活に侵食してくるこわさがありました。
て、今度の「リング2」なんですが、その得体の知れないものにメスを入れて、そこに論理的な回答を見せてしまい、また「呪いのビデオ」以外の趣向も盛り込んでしまった結果、前作の怖さはどこかへ飛んでしまいました。観客の中で恐怖の因果関係が容易に組み立てることができる構成になっていますので、超自然的な絶対的な存在であった筈の山村貞子が、気の毒なヒロインとして、我々のいる世界とつながってしまいました。それはそれで、一つの解釈ということはできますけど、パズルのピースがおさまるところにおさまっていくに連れて、理屈で納得できる領分が増えてきまして、その分「得体の知れない恐怖」は薄れてしまいました。「エイリアン」や「ハロウィン」の第一作ではそのモンスターは絶対的な存在で、人間がどうこうできる相手ではなかったのですが、続編ができてくるにつれて、その正体が明かされて、神秘性、絶対性がなくなっていきました。それと同じパターンを踏んでいると言ってよいと思います。
んなわけで、前作の恐怖のモトをなくしてしまった、この続編で追加された新しい趣向が、「ビデオや貞子を見て生き残った者には超能力が宿る」というものです。つまり、生き残った者が、山村貞子の能力を受けついでしまうらしいのですが、前作の都市伝説のシンプルさに比べると、いかにも物語然としているので、観客の身近に迫る怖さはありません。また、因果関係がはっきりしてくるにつれて、呪いのビデオという設定が嘘臭いものになってしまったのも残念です。深田恭子がサブプロットとして登場するのですが、彼女のエピソードも「呪いのビデオ」都市伝説の基本ルールを逸脱してしまいました。前作の単純構成から、複数の物語を同時進行させるという構成にしたのは、お話の面白さにはつながりましたが、怖さの創造にはつながらなかったようです。前作を観て、怖さの醸造に期待していた人には不満が出るかもしれません。
た、映画の趣向として、他の映画からいただいたと思われるものがいくつも見られました。主要登場人物の人間関係は「エクソシスト2」を思わせますし、クライマックスのエネルギー拡散装置は「ヘルハウス」のリバーサーですし、ラストショットは「女優霊」のセルフパロディみたいです。そんな中で、印象的だったのが、浅川(松嶋菜々子)が幻想を見るシーンでした。モノクロ映像で、駅のガード下のようなところに、どうやら先に死んだ4人の若者らしいのが後ろ向きに立ってて、その先に死んだ父親も後ろ向きに立ってて、父親が浅川に向かって「陽一は助かった筈じゃなかったのか。」というもの。こういうシーンをもっと見たかったのですが、後は因果関係がはっきりしすぎていて、不思議の入り込む余地が少なかったように思います。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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一番得体の知れないのは中谷美紀かな?なんかアブナげ。
前作の予習は必要です。
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