夢inシアター
みてある記/No. 128

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セントラル・ステーション
セントラル・ステーション

- Central Do Brasil -

ブラジル映画で、おばさんと子供が主演、感動巨編? ちょっと違います。

1999.3.7 東京 恵比寿ガーデンシネマ1 にて


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オ・デ・ジャネイロの駅で代筆業をしているおばさんドーラ(フェルナンダ・モンテネグロ)は、代筆して投函するはずの手紙を適当に処分しちゃうような、やなババアです。そんな彼女がある母子から父親あての手紙の代筆を頼まれるのですが、この母親が交通事故で死亡。孤児状態の少年ジョズエ(ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ)は駅でホームレスになってしまいます。なんとなく気になるドーラですが、養子縁組業者に紹介すれば金になるということで、その業者にジョズエを引き渡してしまいます。ところがそいつらが臓器売買の組織の連中と聞かされ、ドーラはそこから強引にジョズエを連れ出し、父親のもとに送ろうとします。でも、ジョズエはドーラの素性を見抜いているので、そう簡単にはなつきません。二人の旅の行き着くところは?

ルリン映画祭やゴールデン・グローブ賞などで、数々の賞を受賞したブラジル映画です。まず、普段見られないリオの風景や駅の雑踏がちょっと珍しい印象です。主人公のドーラはも教師で今は代筆業で生計を立てているようです。まだ文盲率が高いのでしょうか、様々な人間が思いを込めた手紙の代筆をドーラに依頼してきます。ところがドーラはその投函するはずの手紙を、持って帰って、友人と読んでは大笑いして、時にはそれを破り捨ててしまいます。ポストマンが知ったら成敗されちゃいそうなひどい奴ですが、そんな彼女がジョズエという少年と知り合い、そして、彼を助けようとするあたりから、彼女の行動に変化の兆しが現われて来るのです。

段、倫理的に悪いとわかっていながらやってることってあります。最初のうちはなんとなく後ろめたいところもあるのですが、それに慣れてしまうと、もう心の痛みもなくなってしまいます。じゃあ、罪の意識はなくなっているのかというと、そうでもありません。いわゆる休火山のように普段は何ごともないように日々を過ごしているのですが、いざ、そこを正面から突かれると、なんだか居たたまれないような、穴があったら入りたいような気がしてきます。ジョズエの視線、言葉は、純真で無垢でそしてためらいがありません。ドーラは何だか痛いところを突かれてしまうのです。そして、それは、かつてあった気持ちを彼女の中に甦らせるのです。血が通わなくなって、痛みも感じなくなっていた、彼女の心に、暖かい血とそれに伴う痛みの感覚が甦ってきます。

んな人間性の復活みたいなお話なのですが、日常生活感から逸脱しないで物語が展開していくのが、この映画のいいところです。ドーラとジョズエがお互いに依存しあわない独立した人格でありながら、相手のために何かしてやりたくなる気持ちをヴァルテル・サレスは細やかに演出しています。それは、ドーラ役のフェルナンダ・モンテネグロの好演によるところが大きいと思います。何故か、ジョズエについていって、彼を父親のもとへ送り届けようという気になってしまう心の動きをサラリと見せるあたりの呼吸は見事です。また、なんとなく送ってやりたいという気になったという事なので、ジョズエにその真意が伝わらず「何でつきまとうんだ」と言われてしまうあたりのおかしさ、ところが、今度はドーラが一人でリオに帰ろうとすると、何故かジョズエもバスを降りてついてきてしまうあたりの呼吸は、理屈だけじゃない人の心の動きを見事におさえたドラマになっています。

ストは、ささやかなご都合主義を交えながらも、さわやかに泣ける映画に仕上げています。この二人にどのような未来が待っているのか、それは劇場でご確認ください。人は簡単に変わるもんじゃない、でも時に過去に置き忘れていたものを思い出すことができる、そんなことをこの映画は私に語り掛けているように思えました。また、子供をここまで純真無垢な存在に仕立てておいて、いやらしさや胡散臭さを全然感じさせないあたりも感心してしまいました。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 性別、年齢によってこの映画の感じ方は異なると思います。
ちょっといいです。おすすめです。
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