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Polish Wedding
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ホームドラマなんだけど、しぶとい予定調和が不思議な味わい。
1999.3.1
東京 有楽町シネ・ラ・セット
にて |
台はデトロイト、ポーランド系アメリカ人ボレック(ガブリエル・バーン)一家は8人の家族が、母親のヤドヴィガ(レナ・オリン)を中心に回っているという感じです。でも、ヤドヴィガは初老のユダヤ人と不倫中で、5人兄弟の紅一点のハーラ(クレア・デーンズ)は高校中退して、夜中になると窓から出てはその辺を徘徊しています。この娘がなんと若い警察官と恋に落ち、なんと妊娠してしまいます。いやあ、お父さん困っちゃう、お母さん逆上という修羅場になりかかるんですが、いつの間にか何だか落ち着くべきところに落ち着いていくのですね、これが。
の映画の原題は「ポーランド式結婚」といいます。この映画に3つの結婚が語られているのですが、これがみんな「できちゃった婚」なんです。ははあ、「ポーランド式結婚」ってのは「できちゃった婚」を指すのかなんて思っていたのですが、あとでプログラムを読むと、ポーランド系アメリカ人は、敬虔なカソリックが多いんですって。だから、堕胎ができないし、多分産児制限の概念もあまりないのかも。だから、ヤドヴィガは7人の子供を産んでますし、身ごもった時点で、結婚へと流れていくのは自然の成り行きのようなのです。このあたりは、キリスト教にうとい私には難しい話になってしまうのですが、まあ、そういう文化を描いた映画だということになります。
画は本当に淡々と進みます。中盤は結構退屈したりもするのですが、見終わった後味はなかなか悪くありません。なんだかんだと言いながら、結局変わらないものがデンとそこにあって、それが世代から世代へと引き継がれていく。そのある種の頑固さのようなものに気付くと、この映画は結構笑えてしまうものがあります。ただし、この映画の作者が、母親のヤドヴィガに完全に肩入れしている節がありまして、例えば不倫についても、ダンナとの不仲にしても、彼女は結局正しく不変という描き方に見えました。その分ドラマとしての客観性を欠いてるような気がしてしまい、展開そのものには、それほど乗れなかったという印象です。
も、クレア・デーンズがいいんですよ。奔放に見えるのですが、実はそのカソリックの文化を引きついているって感じがよく出ました。妊娠を知って、相手の男に結婚を迫るシーンや、「この街を出よう」という男に「できない」という辺りなど、一人の人間としては出来上がっているわけではない彼女の中に、ポーランド系アメリカ人の文化が脈々と流れているのだなと思わせるあたり、デーンズの好演が光りました。また、父親とのちょっと恋人同士のような関係も印象的でした。ただ、そこにファザコンといった分析的な言葉は似合わないのです。あの親子は昔からああいう関係で多分この先もずっと、恋人同士みたいな関係なんだろうなと思わせるのです。見た目もかわいいクレア・デーンズ嬢ですが、この映画における役柄なりきり度はかなりのものと申せましょう。
画としての面白さということでは、アクションもなく大袈裟な笑いもなく、淡々とした展開だけで、さらにドラマチックでもないというのは、最近では珍しいという印象です。もっと意表を突いた展開とか、意外な結末なんてのがあってもいいと思うのですが、それを頑としてはねつける何かをこの映画は持っています。それを、しぶとい予定調和と表現したのですが、このしぶとさは一筋縄ではいかないようです。ポーランド系アメリカ人というコミュニティの持つものすごいしぶといルール(文化)があるのですが、その中で個々人が、そのルールに逆らわないけど、自由な生き方を模索して、さらにしぶとく生きているという感じです。
技陣ではレナ・オリンが、子供7人産んだけど、まだまだオンナしてますというヒロインをすごい説得力で演じきりました。また、ガブリエル・バーンの頼りなさそうなお父さんが、何の意外性もなく、最後まで頼りないってのも面白かったです。長男の嫁を演じたミリー・アヴィタルはあの「スターゲイト」のお姫様ではありませんか。今回は子持ちで体弱そうなタイプがうまくはまりました。ルイス・バカロフの音楽はアメリカが舞台とは思えないヨーロッパ風の音作りで、ちょっと特殊なコミュニティの雰囲気をうまく出しました。脚本・監督のテレサ・コネリーはデトロイト出身ということですから、それなりの思い入れがある映画なのでしょうね。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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この映画は先に解説やプログラムを読んだほうがいいかも。
クレア・デーンズを見直しちゃいました。
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