ヴァンパイア・最後の聖戦
ヴァンパイア・最後の聖戦
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John Carpenter's Vampires
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ホラーアクションの直球勝負、スピードはないけどなかなかのクセ球。
の世にはヴァンパイアという種族がいるようでして、それは公ではないのですが、ローマ教会のバックアップで吸血鬼スレイヤーなるチームが編成され、ヴァンパイアを見つけては殺していくという地道な活動が行われていたのです。そのアメリカチームのリーダー、ジャック(ジェームズ・ウッズ)が急襲したヴァンパイアの巣、そこで9人を仕留めたのはよかったものの、その夜ヴァンパイアの中でも格上の魔鬼(トーマス・イアン・グリフィス)がジャックのチームを襲い、ほとんど全滅状態、ジャックは相棒のモントヤと魔鬼にかまれた娼婦を連れて命からがら逃げ出します。どうやら、ヴァンパイアたちは大きなイベントを控えているようです。ジャックは連中のねらいを探ろうとするのですが、果たして、それは何か、そしてジャックは連中を阻止できるのか。
ず、前提として、この世には吸血鬼という種族がいるんですって。彼らは人間の血を吸い、吸った人間も自分達の種族に取り込んでしまいます。かれらには十字架もにんにくも聖水も効き目はなく、心臓に杭を打てば動きを止められ、陽の光の下に連れ出せば燃えて灰になってしまいます。そんな連中がのさばられては普通の人間は枕を高くして眠れませんから、吸血鬼スレイヤーの皆さんは連中の巣を見つけると真っ昼間に急襲して、連中を太陽の下に引きずり出すというわけです。まあ、キリスト教ならやりそうな異端抹殺作戦なのですが、ジャックは、正義のヒーローというよりは、プロに徹した殺しの職人ぶりを、なかなかにカッコよく見せてくれます。このあたりはジェームズ・ウッズというエキセントリックな脇役が多い役者さんを持ってきたのが成功しています。
の映画の監督はジョン・カーペンターという人で、「ハロウィン」という連続殺人鬼ホラーで一躍名を馳せた後、「遊星から物体X」「パラダイム」「光る眼」などホラー系統の作品をたくさん手がけ、スクリーンサイズはシネスコにこだわり、タイトルに必ず「ジョン・カーペンターの」とつけることでも知られる個性派監督です。この監督の映画は傑作と呼べる作品はほとんどないのですが、どこか観客(ファン)の心をとらえる何かを映画の中に作り込む、不思議な職人芸を持っています。この作品でも、クライマックスの演出はわざとテンションを上げるツボを外したような演出ですし、折角の悲劇のヒロイン、シェリル・リーもドラマに生かしきれていません。吸血鬼側にもっとドラマをつけることもできただろうにと思わせるところもありますし、けなす気になればいくらでも出てきそうな気がします。
もかかわらず、この映画、嫌いになれないのです。オープニングの吸血鬼スレイヤーが完全武装して、吸血鬼の巣に乗り込むシーンのカッコよさ。地中からニュっと腕を突き上げて、地上に現れる吸血鬼、彼らの横並びに進んでくるシーンが、シネスコ画面によく映えます。キザの0.1歩手前に踏みとどまるジャックのダンディズム、そして、キリスト教(宗教全般かな)に対する乾いたブラックユーモア、脇の神父の意外な活躍ぶりなど、こっちも挙げていったらキリがないくらいホメどころがあるのです。ケナシどころも一杯あるけど、ホメどころも一杯というのが、カーペンター映画の特徴と申せましょう。ですから、マニアックなファンしかできない半面、一度ハマルとなかなか抜けられない魅力を持った監督さんです。私は、最初観た「ハロウィン」で「何じゃこりゃ」と思った後、段々とはまっていったファンの一人です。
者は地味だし、ロケ主体のようですし、たくさんお金がかかっているようには見えない映画です。最近のカーペンター作品ではILMが視覚効果を担当していて画面がそれなり豪華になりつつあったのですが、今回はそれもなく、特殊メイクのKNBイフェクツグループによるヴァンパイア及び犠牲者のメイクが目立つくらいです。それでも結構面白く作って、きちんとモトのとれる映画に仕上がっているところは評価したいと思います。今回はかなり派手な特殊メイクで、気色悪いシーンもあるのですが、ホラー映画の演出というよりは、全体をアクション映画主体でまとめあげて、全体の印象はゲロゲロ映画という感じではありません。ラストの微笑ましいようなキザな決着の付け方まで、全体に流れる「何か憎めない感」は捨て難いものがあります。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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うーん、誰におすすめしようか迷っちゃうよなあ。
でも、好きなんですよ、この映画。
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