夢inシアター
みてある記/No. 116

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ビッグ・ヒット
ビッグ・ヒット

- The Big Hit -

メタメタギャングの殺し合いドタバタコメディ、全編シリアス度皆無。

1999.1.24 横浜東宝シネマ2 にて


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織の殺し屋メル(マーク・ウォールバーグ)は腕は一流だけど、「誰からも嫌われたくない」という強迫的お人好しが災いして、いつも損な役回りばかり。恋人もいればフィアンセもいるメルですが、そのお人好しぶりでいいように扱われてます。そんなある日、相棒のシスコ(ルー・ダイアモンド・フィリップス)たちが組織に隠れて裏仕事を持ちかけてきました。標的は日本の電機メーカーの社長の娘、ちょろい仕事だと思ったのですが、この娘の名付け親が組織のボスだったので、さあ大変。娘を押し付けられたメルは組織を敵にまわしちゃいました。さらにシスコが裏切ってタレこんだため、メルは絶対絶命の危機、さあ、どうする?

港のカーク・ウォン監督のアメリカ第一作です。一見シリアスな犯罪モノのように思っていると、話が進むに連れてどんどん話がおかしな方向に進んでいくという、最近の映画ではちょっと見かけないオフビートなコメディになっています。オープニングのメル、シスコたちの4人チームの仕事ぶりもアクションとしての迫力は十分です。ダンスのような身のこなしを見せるメルのカッコよさはほれぼれなのですが、その割には他の連中がまるで遊んでるってのが、何だかコントみたいです。最後だけ出てきて、いいとこさらうというシスコたちのやり口なのですが、そのことにメルは気付いていないみたいです。

して、プライベートなメルはガレージ付き一戸建ての郊外住宅に住み、恋人からお金をせびられて文句も言えない小心ぶり、レンタルビデオの延滞電話にもヘコヘコ謝り状態です。そんな情けない状況なのも、全て「誰からも嫌われたくない」ということから始まっているってのが笑えます。シスコが「お前、この5年で100人は殺してるだろ、その遺族は嫌ってると思うぞ」っていうあたりがおかしくて、全編にただようユーモア(というよりは「お笑い」って方があってますね)が血生臭いドラマと妙なバランスをとっています。

こから先も、シスコも裏切りはかなりシリアスな筈なのに、ドタバタお笑いタッチでやるものですから殺し合いのドラマが、バラエティのコントみたいなノリで展開していきます。娘の父親が映画に投資して破産して、切腹しようとしてるとか、逆探知のウラのウラのウラをかく機械とか、延滞しているビデオが「キングコング2」だとか、小ネタの笑いも盛り込んでありまして、1時間半をきっちり楽しませてくれます。誘拐された娘がメルに対して好意を抱くようになるのは、お約束の展開ですし、ラストは1対1の対決になるあたり、そして、それなりのハッピーエンドまで、要所要所はきちんと定石をおさえているので、ブラックコメディを観た後のような居心地の悪さが残らないというのも、この映画の長所になっています。

者のうまさも、光っています。特に敵役であるシスコを演じたルー・ダイアモンド・フィリップスの二枚目崩れという感じのキャラクターが傑作です。普通なら、サイテー小悪党の典型といった奴なのに、「敵役」というよりは、「単なるバカ」に徹底したことがドラマ全体をカラリとした味わいにしました。主人公のマーク・ウォールバーグは、一見やさ男、よく見りゃ、かなり情けないキャラクターを好演しました。自分の口から「僕は誰にも嫌われたくないんだ」と言ってしまうおかしな奴、そこのところを人質の娘から「人格崩壊の兆候がある」と指摘されるあたりの妙なリアリティがまた笑えます。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 大バカコメディと思って観るのが正解かも。
お気楽娯楽映画の佳作、面白いですよ。
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