夢inシアター
みてある記/No. 112

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マイ・スイート・シェフィールド
マイ・スイート・シェフィールド

- Among Giants -

鉄塔にペンキ塗ってたら、オヤジとフリーターがデキちゃいました。

1999.1.5 東京 銀座シネ・ラ・セット にて


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業中だったレイ(ピート・ポスルスウェイト)が見つけた仕事は送電線の鉄塔のペンキ塗り、仲間を集めてこの仕事を引き受けます。そこへ現れたのは一人旅の流れ者(バックパッカーっていうんですか)クライマー、ジェリー(レイチェル・グリフィス)です。ジェリーもこの仕事に雇われることになります。初老のレイに、まだ若いジェリーという取り合わせが、何だかいい雰囲気になってきます。お互いに愛し合うようになり、結婚まで考える二人ですが、レイには別居中の妻がいるし、ジェリーもおとなしく妻の座におさまるタイプではありません。鉄塔のペンキ塗り作業が進められる一方、二人の愛情にも変化の兆しが見え始めます。

「フ
ル・モンティ」の脚本家の書いたストーリーだそうですが、不思議な寓話のような味わいのラブストーリーになっています。考え様によっては、色ボケオヤジの恋模様にも見えるドラマでして、恋というには苦く、愛と呼ぶには、はかないドラマの結末は劇場でご確認下さい。自分捜しの旅を続けてきたジェリーが、このオヤジと一緒になって、この土地に根を下ろそうとするのですが、どっこいシビアな現実に直面することになってしまうのです。この映画は、シビアな現実と、浮世離れしたものが対を成してドラマを形作っているのが面白い構成です。

のシビアな現実としての失業中の男達、彼らが手にした仕事が送電線の鉄塔のペンキ塗りというちょっと風変わりな仕事です。それも、グレーの鉄塔に黄色いペンキを塗って、さらにその上をグレーに塗るという仕事なのです。限られた期間に塗らないと送電が始まってしまうというタイムリミット付きで、給料の支払いが滞りがちという現実とが不思議な交錯を見せます。鉄塔の上の作業は危険なのは勿論なのですが、世界を見下ろす開放感があります。クライマー(絶壁や岩山を登る趣味の人)でもあるレイやジェリーにとってはそこはある種特別な場所なのでしょう。

た、この二人のラブストーリーの展開がなかなかに臆面もないというか、結構ラブラブなのが面白いです。レイが仕事仲間に「いい年こいて」といわれるのも、さもありなんという展開は劇場でご確認頂きたいのですが、オヤジの一人としては、いい年こいて、やってみたいな、ああいうのっていう気分でもあります。このあたり、ガスタンクの上のラブシーンなどの、絵の美しさも大変印象的でした。でも、そのラブラブが実際の結婚を意識すると、何だか年齢差以上のハードルがあるみたいなんですよ。お互いの生きてきた人生の擦りあわせの難しさって確かにありますもの。この二人がその困難と痛みをどうやって乗り切るかが見物なのですが、ここで、なかなかにカッコいいのですよ、このレイのオヤジが。言葉にならない想いと、語られる痛みの決着は苦い後味を残しながらも、不思議と後悔の念は起こりません。

ート・ポスルスウェイトは、カッコいいオヤジをできるだけ不格好に演じてみせたという感じです。でも、若い二人だったら、愁嘆場を繰り広げるであろうところを回避する大人の分別は、カッコ良く見える一方、切なくもあり、やせ我慢のようにも見えます。一方のヒロイン、レイチェル・グリフィスは、自分捜しを一生続けていそうな、いかにも孤独とクサレ縁というタイプの女性を好演しました。自分が、今の自分とは違う自分に変わることを、生きがいにしているようなタイプ、自分の未来が見えることを何だか怖れているようにも見えました。それでも、惚れてしまえば男と女、さらに、それでもお互いの人生を共有することの困難さ。人生は旅だなんて言うとカッコいいけど、旅人は結構大変みたいです。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 失業ネタかと思ってたら、ラブストーリーでした。
でも、ビタースィートな味わい。
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