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これはゲイコメディ、でもって正真正銘ゲイコメディだ。
1998.12.22
東京 銀座テアトル西友
にて |
舎町の高校の英語教師ハワード(ケビン・クライン)はもうすぐエミリー(ジョーン・キューザック)との結婚式を控えてます。一方、ハワードの昔の教え子キャメロンがアカデミー主演男優賞の栄誉を勝ち取るのですが、その授賞式のスピーチで、ハワードへの謝辞の後、とんでもないことを口走ってしまいます。「彼はゲイです。」次の日から、小さな田舎町はマスコミは押しかけるは、みんなのハワードを見る目の色が変わっちゃうわで大騒ぎ。ハワードにとっても身に憶えのない、驚き以外の何物でもない晴天の霹靂です。でも、エミリーは彼を信じてくれています。一応、結婚式をクリアしちゃえば大丈夫だと思っていたのですが、ところがどっこい思わぬところ伏兵がいたのです。
だしのアカデミー賞授賞式が笑わせてくれます。インタビューされるウーピー・ゴルドバーグや、プレゼンターのグレン・クローズは、本人が登場するというサービスもありますし、かつての教え子キャメロンが出演した映画というのがまた笑えるのです。内容はゲイの兵士が差別されるという物語で、脇でダン・ヘダヤも登場するなかなかのつくりの戦争映画なのですが、これがもう間がとてつもなくおかしくて笑いをとります。このあたりは、昔の「フライングハイ」などのザッカー兄弟のバカ映画を思わせるものあるのですが、物語がハワードに戻ってくるといわゆるシチュエーション・コメディの様相を呈してきます。
ビン・クラインが演じる英語教師のハワードは、スマートで線も細いし、詩や愛を語る教師ってのが、なんだかゲイって言われたときに妙にリアリティがあります。いわゆる「言われてみれば....」というタイプです。それだけに、こんな騒動が持ち上がると、周囲は「え....」って腰を引いてしまいます。まだまだ保守的な土地柄の田舎町だけにこういう騒動が妙にリアルに見えてきます。フランク・オズ監督は、ゲイだという噂を立てられてしまい、右往左往する本人、及び町の人々のドタバタを快調に描きました。
イをテーマにしたコメディというと「Mrレディ・Mrマダム」なんていうのが有名ですけど、ゲイが市民権を得ている昨今は、ゲイだから笑えるというコメディは作りにくいようです。でも、この映画では、ゲイというだけで、みんなの態度が変わっちゃう、下手をすれば職を失う可能性があるという保守的な社会が舞台に振って湧いたゲイ騒動という設定にして、ゲイに対するリアクションで笑わせるということで、今様のドラマに仕上げることに成功しました。
かし、単なるリアクションで笑わせるだけにはとどまりません。ドラマはテレビレポーターのピーター(トム・セレック)が登場してくることで、よりややこしい方向に進んでいきます。この先はネタバレの怖れがありますから、これから御覧になろうという方はパスしてください。
ーターは自分がゲイであることを、ハワードに告げ、そして、ハワードもゲイであることを指摘するのです。そんな筈はないと思うハワードですが、一応「男になるための訓練テープ」なるものを買い込んできて、「ゲイじゃないぞ」と頑張ろうとするのですが、このテープがまたおかしい。いわゆる「世間的にゲイじゃない」ってのはどういうことかってるのをレクチャーするテープなのですが、外見的にどういうのが「男」であってどういうのが「ゲイじゃない」のかというのは、その境界は曖昧でかなりいいかげんです。要は内面の問題なのだという当たり前の結論にたどり着くのですが、そこにどうやってたどり着くかは劇場でご確認ください。
半はあまり出番がなくて気の毒かなあと思っていたジョーン・キューザックが後半画面をさらいます。結婚のために34kg減量したって登場してくるのが妙だったのですが、彼女がどんな想いでこの結婚を待ち望んでいたかを一気に語りまくるシーンが見物です。打算的でロマンチックな彼女の心情にはホロリとさせるものがありますし、「誰でもいいから結婚してえ」というあたりのブチ切れぶりが楽しいキャラクターになっています。
ライン、キューザックのほかにも、意外な善人ゲイぶりがきまったトム・セレックの好演は見逃せませんし、マット・ディロンの人を食ったキャラクターや、ウィルホード・ブリムリーのひょうひょうとしたパパぶりとか、高校の生徒たちのいかにも田舎の子供たち風のリアクションなど、役者のうまさに支えられていう部分が大きい映画です。意外なところ落とす結末は、強引だけど、まあハッピーならいいかなってところです。その分、妙な問題意識を出さないで済みましたし。
ジャックナイフ
64512175
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前半がとくに笑えるゲイコメディ。
ジョーン・キューザックいい!
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