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The Object Of My Affection
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単なるゲイのドラマにとどまらない、普遍的な愛と出会いの物語。
ーシャル・カウンセラーのニーナ(ジェニファー・アニストン)は、ヴィンス(ジョン・パンコウ)という恋人がいる身なのに、ひょんなことから、彼氏に振られたばかりのゲイの小学校教師ジョージ(ポール・ラッド)と同居することになります。傷心のジョージではありましたが、ニーナのさばけた人柄に元気を取り戻していきます。そんなとき、ニーナがヴィンスの子供を身ごもってしまいます。それでいて、ニーナはヴィンスとの共同生活には不安と不満があって、子供は欲しいけど、結婚はやだなんて言い出します。そして、うちとけたジョージにとんでもない提案を持ち掛けるのですが......。
人のいるキャリアウーマンが、ゲイの男と同居するようになって、その男と仲良くなってしまう物語です。予告篇なんか観てもそういうお話みたいに見えます。それは確かにそうなのですが、お話はその先があって、単なるゲイをネタにしたラブコメディではありません。「クルーシブル」で究極の愛の形の両極端を描いたニコラス・ハイトナー監督は、ここでもある意味での「究極の愛の形」を暖かさと厳しさのある視点できっちりと描いて、じんわりと感動させてくれます。
の映画では、ニーナを中心に、様々な登場人物の想いが交錯します。想いとは、男女間の恋愛感情であったり、男同士の色恋沙汰であったり、また、友情であったりと色々です。そして、登場人物の各々が、自分が何を望んでいるのか、そして自分に何ができるのかを悩みながら模索していく様をコミカルに、しかし真摯に描いていきます。単に相手を好きなだけでは越えられないハードルも、前向きに生きることの痛みもきちんと描いて、その上でポジティブな生き方を提示しているのです。交錯した感情の決着を見せるラストのほのぼのとした余韻に、観ていて泣かされてしまいました。こんな映画観に来たつもりじゃなかったのに、このハッピーエンドには、「うまいなあ、ちくしょう」と思いながらもメロメロにされてしまったのでございます。
の映画の中で「人生の伴侶は一人」という言葉が印象に残りました。とっかえひっかえすることもあるけど、基本は一人、だから真剣に選ばなくちゃいけない、でも、「想う相手に想われる」とは限らない。そんな当たり前のことが、ヒロインとゲイのジョージの不思議な恋愛感情の中で際立ってきます。相手にないものを望んでしまう気持ち、その気持ちにどう応えることができるのか。ニーナとジョージの変則恋愛ゲームの顛末はどうか劇場でご確認ください。
場人物に細やかなキャラクター付けをした脚本、演出のうまさも勿論ですが、役者のよさも見逃せません。冷静に考えれば、ちょっと困ったちゃんなヒロインをアニストンは好感の持てる形で演じきりました。また、ベテランのアラン・アルダがひょうひょうとした味を見せ、名優ナイジェル・ホーソーンがドラマの重しとなりました。悪人、敵役が全く登場しないドラマなのに不自然にならないのは、個々の長所短所をきちんと見せているからでしょう。等身大の人間の織り成すドラマは親近感のある見応えを運んできます。ささやかな恋慕、ささやかな嫉妬、ささやかな誠実さ、誰にでもあるであろうこれらの感情を、見るものが納得できる形で展開していくのは、お見事だと思いました。ゲイのラブコメディだと思って敬遠してしまうのは勿体ない、98年の最高の「愛」のドラマです。映画を見終わって、胸がいっぱいになるのは久しぶりでしたもの。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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地味な題名、ポスターだけど見逃すともったいないですよ。
個人的に大ハマリ状態になっちゃいまして。
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