夢inシアター
みてある記/No. 102

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アンツ
アンツ

- Antz -

CGアニメだけど、視点はシニカル、いい大人もごいっしょに。

1998.11.22 神奈川 川崎チネBe にて


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リの王国の働きアリZ(声:ウッディ・アレン)は自分の価値を認識できず精神分析医通いの日々。ところがある日お忍びでダンスホールに来ていたバーラ姫(声:シャロン・ストーン)と知り合い一目惚れ。そして、友人の兵隊アリのウィーバー(声:シルベスター・スタローン)と入れ替わって観兵式に紛れ込み、そのまま戦場に送られてしまいます。ところが、どういう幸運か彼は唯一の生き残りとして一躍ヒーロー、ところが身分詐称がばれて、バーラ姫を人質に逃走をはかります。Zは、虫たちの理想境と呼ばれるインセクトピアを目指します。一方バーラ姫のフィアンセでもあるマンディブル将軍(声:ジーン・ハックマン)はZを追う一方、恐るべき陰謀を企んでいたのでした。

リの物語なんだけど、冒頭からして、Zが精神分析医のカウンセリングを受けているシーンというのが普通の映画ではありません。それもオフの画面からのウッディ・アレンの独り言で始まるアニメなんて前代未聞です。そして、映画は始まってからも、このZのキャラクターが悲観的で皮肉屋で善人じゃないという、最近のアレンが演じるキャラクターまんまなのかおかしいのですよ。この「おかしい」は「笑える可笑しい」と「ちょっと変」の両方の意味とお考え下さい。

て、この先のZの行動がなかなかに面白いのですが、彼は全体主義のアリの王国の中では異端視される個人主義の持ち主、でもかなりエゴイスティックなキャラクターです。そんな彼がアリの王国のヒーローになってしまうというのは逆説的な面白さがあります。どちらかといえばウィーバーとかマンディブル将軍の副官といった連中の方が奥行きのある、よくできたアリなのですが、それでも成り行きヒーローのZの方が最終的にハッピーになっちゃうあたりのおかしさは劇場でご確認ください。とはいえ、クライマックスも全体主義が個人主義に否定されると思いきや、全体主義の遺物が主人公たちを救うという皮肉が効いていて、これは、アメリカらしい多重構造を持ったコメディという分類ができると思います。

も、それをCGによるアリでやったところがすごいです。プロポーション的には「みなしごハッチ」に近いものがあるのですが、顔の表情はモロに人間なんですよね、妖精っぽいカワイイ系の顔になっていないリアルな人間っぽさがお見事でした。また、群衆シーンのすごさも特筆もので、これはやはり劇場で観る映画なのだと思いました。

れにしても、仕掛の面白さも十分で、実際にインセクトピアが画面に実在するものとして登場するとは思いませんでしたし、クライマックスの盛り上げもホロリとさせるものがありました。シンプルな物語の随所に効かせたスパイスもうまく作用しているようでして、バーラ姫のリアルなキャラクター、マンディブル将軍の象徴する全体主義の説得力など、声優陣に豪華な面々を揃えたのもうなずづけるドラマの奥行きがありました。特に、ウッディ・アレンを持ってきたのがすごいと思ったのですが、彼でないとこの映画の奥行きがだいぶ変わっただろうと思わせるほどの好演でした。

の役者陣では、ハックマン、スタローン、アン・バンクロフトがタイプキャラを無難にこなし、ダン・エイクロイド、ジェニファー・ロペス、クリストファー・ウォーケンが結構おいしいところを持っていきます。特に、ウォーケンが終始抑えた演技なのが印象的でした。また、シャロン・ストーンのお姫さまがなかなかにチャーミングなのが意外でした。

リー・グレグソン・ウィリアムスとジョン・パウエルという、ハンス・ツィマー一派による音楽がなかなかに聞き物でして、アリ社会を実際の画面より早いテンポの曲で表現したり、いつものアクションものよりパーカッションを控えめに柔らかめの音にしたり、色々と工夫をこらした音作りで楽しませてくれます。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 お正月までの穴埋めにするには惜しいなかなかの佳作。
やはり仕掛けより物語がモノを言います。
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