夢inシアター
みてある記/No. 96

dummy
dummy

ダイヤルM
ダイヤルM

- A Perfect Murder -

ヒッチコックの名作のリメイク、と思って観ない方がいいですよ。

1998.11.2 川崎チネチッタ4 にて


dummy

業家スティーブン(マイケル・ダグラス)の妻エミリー(グウィネス・パルトロウ)は、新進の画家デビッド(ビゴ・モーテンセン)と浮気中。どうも夫婦の仲はしっくりいってなくて、エミリーは単なる火遊びじゃなくて、マジでデビッドと一緒になろうなんて考えているようです。ところが、この浮気にスティーブンが気づかないでいるはずもなく、デビッドの過去を調べて脅しをかけてきます。そして、スティーブンは手切れ金を渡す代わりに、妻の殺害を要求してきます。果たして、その日がやってきて、殺害プランは実行に移されるのでした。

「ダ
イヤルMを廻せ」というヒッチコックのサスペンス映画がありまして、これはそのリメイクなのだそうです。エンドクレジットでもそういう表記がされています。私もヒッチコックの「ダイヤルMを廻せ」はテレビ放映されたのを観たことがありまして、大層面白いミステリーだったという記憶があります。とはいえ、詳細はかなり忘れていたのですが、観ているうちに、「おお、これだこれ」という感じで、色々と思い出しながらこの映画楽しみました。

ンドリュー・デイビスの演出は、オープニングで浮気の現場を見せてしまい、それから、ダンナが妻殺しを持ち掛けていくあたり、テンポ良くさばいていて、なかなかに期待させてくれます。そして、殺害シーンもなかなかにスリリングに見せてくれるのですが、その先がパトリック・スミス・ケリーの脚本が話しを弾ませてくれないという印象でした。折角の伏線が、折角の小道具が、折角のデビッド・スーシェがと、何だか勿体無いような展開になってしまうのが惜しかったです。

ウィネス・パルトロウは「セブン」の可憐な人妻から、最近は「沈黙のジェラシー」や「スライディング・ドア」のようななかなかしたたかなキャラクターまで色々とこなす人ですが、この作品でも彼女の一筋縄ではいかないキャラクターが不思議な余韻を運んできます。原題であるところの「完全殺人」は成功したのかどうかは、劇場でご確認下さい。

イケル・ダグラスはすこしやせたみたいで、お父さんのカーク・ダグラスに似てきました。言い方を変えるとビートたけしに似てきたとも言えますが、その分「ウォール街」のころのような押し出しの強さは薄れてきたように思えます。この映画では神経質そうなキャラクターがなかなかドラマにうまくはまったようです。

ッチコックの「ダイヤルMを廻せ」はもとが舞台劇のせいかもしれませんが、ゲームのような面白さがありました。今回は、ロケのうまさを生かしたりしたり、ヒロインのキャラクターに陰影を持たせたせいか、推理ゲームの要素はかなり削られてしまったようです。刑事役のデビッド・スーシェが、ヒッチコック版のジョン・ウィリアムスのようにコロンボばりの活躍をしてくれると期待したのですが、そうはならなかったのが、ちょっと残念でした。まあ、前作を単になぞるのではなく、別の意外性や展開を見せようとした意図はわかるのですが、前作が推理劇としてかなり完成されたものだっただけに、比較するとどうしても見劣りしてしまいます。それなら無理に前作にこだわることなく、全く新しいネタとしてやってもよかったような気がします。単独の映画としてみた場合、「ダイヤルMを廻せ」と「ダイヤルM」は同じ題材を別のアングルから撮った作品と言えそうでして、どちらが好きかは観る人の好みで別れるところでしょう。

リウス・ウォルスキーのカメラがロケもセットもシャープでかつ明るい画面を作っているあたりや、ジェームズ・ニュートン・ハワードのパーカッションをきかせた音楽がなかなかに印象的でした。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点0点0点 でも、カギとなる小道具は生かして欲しかった。
ラストにもう一呼吸欲しいところ。
dummy