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The Horse Whisperer
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癒し云々より、スター映画としてのラブストーリー。
1998.10.31
神奈川 ワーナーマイカル茅ヶ崎シネマ3
にて |
女グレースは乗馬中の事故で親友を失い、自分も馬も重傷を負います。落ち込む彼女を見かねた母アニー(クリスティン・スコット・トーマス)は「ホース・ウィスパラー」と呼ばれる、馬の治療をする男トム(ロバート・レッドフォード)のもとに娘と馬を強引に連れて行ってしまいます。あまり乗り気ではなかったグレースですが、トムの「君にその気がなければ何もできない」という言葉に、彼に自分の馬を任せることを決意します。牧場での生活の中でグレースも馬も少しずつ生気を取り戻していきます。そして、アニーとトムの間にも恋愛感情が芽生えてくるのですが、ちょっと待った、アニーには、ちゃんとロバート(サム・ニール)というダンナがいるんですぜ。
時間47分という長い映画ですが、物語としては非常に静かに進行します。美しいロケーションに展開する、傷を負った少女と馬が立ち直る物語に、不倫のおまけつきですから「癒しと恋」の物語なんて宣伝文句がついてますけど、これが意外やスター映画の趣があるのですよ。つまり、スターとしてのロバート・レッドフォードの映画になっているという印象です。自分で監督しているせいもあるのかもしれませんが、でもナルシシズムの映画ではないです。監督レッドフォードがスターとしてのレッドフォードを素材として使い切ったという感じです。
画の前半は傷ついた少女とその愛馬ピルグリムがいかにして、「ホースウィスパー」であるトムと交流を持てるようになるかをじっくり腰をすえて描いています。大自然を背景に描かれるトムとピルグリムとのやりとりを丁寧に積み重ねていくあたりがこの映画の大きな見所となっています。一方、心の傷の癒えないグレースがトムに心を開いていくくだりも、淡々と描かれています。
半からは、トムとアニーの恋愛ものの雰囲気になってくるのですが、このあたりの描き方もよく言えばじっくり、ひらたく言うとゆっくりという感じです。でも、その感情は、確かに熱い想いではあるのですが、周囲も焦がすほどまでにならないあたりが、最近の映画には珍しいという印象です。「イングリッシュ・ペイシェント」で全てを焼き尽くすような恋を演じたクリスティン・スコット・トーマスですが、ここでは抑制のきいたオトナの恋の顛末を見せてくれます。ラストの処理のささやかな二転三転はなかなかに見事です。
して、前半、後半ともに、トムは徹底した二枚目であり続けるのです。このあたりがこの映画をレッドフォードのスター映画と呼ぶゆえんなのですが、私はそれだからこの映画の価値が下がるとは思いません。つまり、スター映画としてよくできていると思うのです。自然、動物と人間の交流、傷ついた少女の再起、そしてほのかなオトナの恋愛、こういった要素が、1本の映画の中でうまくミックスされた娯楽作品としてこの映画を買います。レッドフォードは確かに年をとったという印象はあるのですが、こういう役柄を演じられるスターと言うと、やはり彼しかいないと思いますから、これはベストのキャスティングだと思います。
た、脇にいい役者を揃えて、彼らがきちんと主役を引き立てるように機能しているのもうまいと思いました。私が大好きな、ダイアン・ウィーストとサム・ニールがいいところを見せてくれるのがうれしかったです。また、レッドフォードの演出も彼らに対する敬意が感じられたのも好感が持てました。
ーマス・ニューマンの音楽は幻想的なタッチの部分で少女の心象風景を見事に描写し、後半では、スケールの大きなオーケストラ音楽でオトナの恋を彩りました。この音楽も含めて、全体の抑制のきいたタッチが、いわゆるレッドフォードのカラーなのかもしれません。そのいわゆる品の良いタッチで3時間近くを飽きさせないのですから、大したものです。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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たまにはこういう映画にどっぷりつかるのもいいかも。
サム・ニールはどんな役もうまい。
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