夢inシアター
みてある記/No. 90

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ムーラン
ムーラン

- Mulan -

おー、これは面白くて感動ありの娯楽巨編で、その上アニメだ。

1998.10.17 東京 みゆき座 にて


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の昔の中国にフン族が攻め込んできました。国を守るために一家に男一人の徴兵命令が出ました。娘ムーランの父は前の戦争で体を傷めていたのですが、彼は自分の名誉のために軍隊に行くと言います。そんなムーランは一大決心、自分の髪を切り、父の武具を身につけて、男として軍隊へと向かいます。当時は女が男にたてつこうなんてもっての他、ましてはそんなことをすれば死刑ものの御時世。御先祖様の霊はそんなムーランを守るためにドラゴンを送り込むのですが、こいつもちょっと大きめのトカゲみたいでなんだか頼りないのです。

墨画から始まるタイトル、そしてオープニングの万里の長城の奥行きのある移動ショットとのっけから「おー」と感心してしまう絵作りです。登場するキャラクターが東洋人なので、ちょっと昔の東映動画の観ているような気分になります。ムーランがつり目で東洋人をステレオタイプ化している云々といった話を聞いていたのですが、そんなことは感じませんでした。なかなかに魅力的なヒロインになってまして、髪を切って旅立つシーンのカッコよさには惚れ惚れの気分です。一方での一ヒロインとしての魅力も十分でして、乙女の恥じらいとか、ほのかな恋心などを深入りしないで、さらっと見せるあたりのセンスが好きです。

インの物語は大変シリアスなものなのですが、そこに守護神ドラゴンや軍の仲間たちを使って、笑いの部分も抜かりありません。正直こんなに笑える映画だとは期待していませんでした。ドラゴンをふきかえたエディ・マーフィは、「アラジン」のロビン・ウィリアムス以来のヒットでしょう。単なる騒々しいキャラクターではなく、それなりのペーソスを感じさせるあたりはうまいなあって、ここでも感心。その横にいる「幸運のコオロギ」はセリフのない、「アラジン」の魔法のジュウタンみたいな役どころで、なかなかにコミカルで健気です。コメディリリーフが妙に浮き上がってしまわないあたりの節度が、好感度を上げています。

た、ヒロインのムーランが妙に突っ張ったキャラクターになっていないところも好感が持てました。お父さんのために自分が兵隊となる、そして、立派な手柄を立てるのですが、別に野心があるわけではないし、正体がばれるとガックリと意気消沈、でもいざとなったら毅然と闘う意志の強さ。「GIジェーン」とは全然違う、「アナスタシア」のような強いヒロインでもない、しなやかなキャラクターのムーランが最終的に国を救ってしまうというのは、ある意味で新しいタイプの女性映画ということもできましょう。確かに舞台が昔の中国でして、女性の地位は低いですし、ムーランはそんな社会に反旗をひるがえすキャラクターではないです。でも、その頑張りぶりは観ていて感動的です。

闘シーンのスペクタクルは、はっきり言ってすごいです。CGを要所要所に使っているのでしょうが、騎馬集団のロングショットは圧巻です。また、今回の特色は音楽で歌とスコアで別の人が担当していること。歌の部分はいつものディズニーらしい(でも今回はアラン・メンケンではなくて、マシュー・ワイルダーという人)ミュージカル的な音作りですが、一方のスコア(これを手がけたのが名匠ジェリー・ゴールドスミス)部分が戦闘シーンやシリアスなシーンをドラマチックに盛り上げました。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点1点 ドラマだけでなく、視覚的なスペクタクルも見物。
隅から隅まで楽しめる娯楽映画。
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