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Saving Private Ryan
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オスカー監督スピルバーグが、映画技術の粋を集め、戦場の悲惨さを記録映画なみのリアリティで再現。
ライベート・ライアン」の監督スピルバーグは、インタビューの中で、観客が「もうやめてくれ」と叫びたくなるくらい、本物の戦争を徹底して描きたかったと言ったそうですが、実際にその凄惨さ、悲惨さは直視するのが耐え難いほどでした。
に冒頭のノルマンディー上陸作戦の場面では、本当に自分がその場所にいるような錯覚を覚えて、すぐにでも逃げ出したくなるような恐怖を感じました。ドキュメンタリー的な映像処理もさることながら、一番の驚きは音のリアリズムです。待ち受けるドイツ軍の砲弾が雨あられと降り注ぐ中、ほとんど無防備状態の兵士たちがただひたすら海岸を目指す図は、まさに地獄絵図のごとし、打ち寄せる波は兵士たちの血で真っ赤に染まっています。
までいろいろな映画のさまざまな恐ろしいシーンを見てきましたが、しょせんは客席の自分とは別世界のスクリーン上での出来事だという安心感がありました。でも今回は、爆音と兵士たちの阿鼻叫喚に交じって、弾が空を切り何かに命中する音が耳元で炸裂するので、本当に実弾がこちらに飛んでくるような錯覚に見舞われるのです。
うまでもなく、この映画は映像と音響だけの映画ではありません。徹底して描かれているのは戦争の生み出す「矛盾」と「不条理」の世界です。登場する人物はどこにでもいるような欠点だらけの人間ですが、決して狂ってはいません。戦場における「狂気」をキーワードにその悲惨さを安易に描こうとする今までの戦争映画とは、明らかにこの点が一線を画しています。登場人物が狂っていないだけに、映画が戦争という非日常を描いているにもかかわらず、登場人物に降りかかる出来事がとても身近なものとして感じることが出来るのです。
回は物語については触れないでおくことにします。登場する兵士たちの運命がどうなるかは、ぜひ劇場でご確認ください。映画の中の彼ら同様見る側にも、全く先の見えない極限状態で命のやりとりをする戦場の不条理を体験していただきたいからです。そう言う意味で、冒頭で戦士の墓参りをする老人が何者なのか、観客には全くわからないようになっているのは心憎いやり方だと思いました。この映画の言いたいことはラストに彼が妻に問いかけた言葉に尽きると思います。ただ、監督のこのような素晴らしいメッセージが、「だからノルマンディー上陸作戦は失敗で、原爆投下は正しい」という、とんでもない解釈を生むことが万に一つもあってはならないと願うのみです。
魔女っ子★マキ
88721053@people.or.jp
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