40年にわたる母娘2代の絶ちがたい絆を「学校の怪談」の平山秀幸チームが映像化した秋の邦画話題作。
を乞うひと」は、今年度のモントリオール映画祭で国際批評家連盟賞を授賞しました。「絵の中のぼくの村」で慈愛に満ちた母親を演じた原田美枝子が、本作では自分の娘に虐待の限りを尽くす鬼のような母親とその娘の二役に挑戦しています。
に早く死なれ女手一つで高校生の1人娘を育てている照恵(原田美枝子)は、戦後まもなく病死した台湾人の父親(中井貴一)の遺骨を探していました。父の死後、知人宅や施設などを転々とした幼い彼女は、その後母親(原田二役)に引き取られるのですが、なぜか母親は彼女のことを目の敵にして毎日酷い折檻をするのでした。筆舌に尽くしがたい虐待の記憶を封じ込め成人した彼女ですが、幼い時に受けた心の傷は今も癒えません。彼女にとって父親の遺骨を探し出すことは、母を一人の女として見つめなおす旅でもあったのでした。
人公の少女時代の回想シーンでは、戦後の混乱から40年代前半にかけての当時の様子が活き活きと描かれています。特に主人公母娘が住む長屋の様子や生活描写など、時代的な空気がリアルに伝わってくるところは特筆できます。ただ、当時のことを一部うる覚えながらも記憶にある私としては、時代考証がちょっと古すぎるのではないかと思う場面が随所にありました。まぁ、古めかしいほうが現代との対比がくっきりと出るので、これも映像的なテクニックかな?とも思います。
情的な母、そして物静かな娘、全く正反対の性格を持つ二人の女性を原田美枝子が説得力を持って演じています。なぜ母は幼い娘をあそこまで殴り続けたのか? 父と母の出会いから別れまでの事情が明らかになるにつれ、愛に飢え苦しむ母親の姿が浮かび上がって来るのですが、彼女の暴力についてははっきりとした理由は説明されていません。ただ、どんな親に育てられどんな悲惨な子供時代を過ごそうとも、その後の人生を愛で満ちあふれたものに出来るという、ラストの明るさには救われる思いがしました。
変重苦しいテーマを扱った作品ではありますが、ただ暗いだけではなく、「おしん」のような大変不幸な子供時代を過ごした娘の半生記ものとしてこの映画を捉えることもできるでしょう。ちょっと物足りなかったのは、母親からの出奔を助けてくれた異父弟との再会シーンでして、親子の関係ばかりでなく姉弟愛についても、もう少し盛り上げても良かったのではないかと思いました。
魔女っ子★マキ
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愛について考えさせれる佳作なのですが、
虐待シーンに拒否反応を示す人もいるかも?
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