夢inシアター
みてある記/No. 85

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ラスト・ウェディング
ラスト・ウェディング

たまには混じりっけなしの純愛ドラマはいかがでしょう。

1998.9.26 神奈川 関内アカデミー1 にて


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ーストラリアの美しい島にやってきたのは、中年カップルのハリー(ジャック・トンプソン)とエマ(ジャクリーン・マッケンジー)、この二人、今度結婚することになったんですって。一緒に過ごす友人たちもびっくりです。それも、この週末にどうしても式を挙げるんだって、ハリーは張り切っていますし、エマもめ一杯幸せそうです。ところが、その島で結婚するためには、色々と許可やら何やら必要でとてもこの週末に結婚なんて無理みたい。でも、どうしても早く結婚したいという二人にはそれなりの事情がありました。エマに残された時間はあとわずかだったのです。

演のハリーを演じたジャック・トンプソンというのは、恰幅のよい実業家タイプのオヤジでして、「真夜中のハバナ」「戦場のメリークリスマス」などで有名なバイプレーヤーです。そんなオヤジが主人公のラブストーリー、南国リゾート編とでも申しましょうか、美しい自然をバックに悲恋物語を丁寧に描いた好篇です。そして、この物語は実話に基づくのだそうです。

場人物はこのカップルにあと友人の4人の男女というシンプルなもの。そして、彼ら全てが絵に描いたような善人であるのですが、それが嫌みに見えないのは、監督のグレーム・ラディガンの腕前なのでしょう。そして、映画は二人のなれそめとか、友人たちの過去とかにほとんど触れません。夏のリゾート・アイランドで起こった出来事だけを抑制のきいたタッチでつづっていくのです。結婚式をあげるために右往左往するハリーの姿はコミカルに描かれ、また、友人のデビッドとルイーズの恋模様も、のんびりホンワカムードです。一方、エマが自分の運命について友人達に語るシーンは非常にドラマチックに観る者を圧倒します。ここでは、彼女のセリフが途中からオミットされ、ドラマチックなオーケストラ音楽と、それを見つめるデビッドの表情のみで描ききるという演出が泣かせます。この映画は要所要所で、できる限りセリフを排して絵と音楽のみで気持ちを伝えるという演出をしており、それが見事に効果をあげています。ハリーがドレスアップした花嫁を迎えるシーンや、二人が別の若いカップルの結婚式の行列を見送るシーンなど、セリフがないのに、心の琴線に触れてくるものがありまして、何だかよくわからないけど泣かされてしまいました。

ロインのエマを演じたジャクリーン・マッケンジーが大変美しい女性として描かれています。自分の運命というものを受け入れながらも闘いを挑む、そんなヒロインを慈しむハリーの気持ちがこちらにも伝わってきます。本当は、ここにいたるまでに二人の間にいろいろなドラマがあったのでしょうが、それをあえて説明せず、結婚を控えた中年カップルと、それを祝福する友人たち(この映画は友人のデビッドの回想という形で描かれています)の南の島での数日間というところに絞り込んだのが成功しています。美しい自然をバックに描かれる愛の物語は、ラストの(ホントに)ささやかな奇蹟の余韻を残して、一種のファンタジーの世界へと昇華します。

えようによっては、ここまで臆面もなくやるかという気がしないでもない純愛物語の一篇なのですが、描かれる様々なエピソードの積み重ねが観る者の胸を満たしてくれます。見終わった後味としては、これは「祝福」の映画なのだと思いました。神の祝福なんかじゃなくって、ハリーとエマのカップルを彼ら自身が祝福し、友人たちが祝福する。そして、観る者もその祝福の輪の中に加われそうな気分にさせてくれる映画です。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 たまに観るならこういう映画、役者がみな好演してます。
見終わって思い返すほどに、いい映画。
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