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Sliding Doors
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恋のパラレルワールド、でも運命ってそんなにいくつもあるの?
レン(グウィネス・パルトロウ)には2年半越しの同棲中のジェリー(ジョン・リンチ)がいます。彼女が広告代理店をクビになった日、ジェリーは昔の恋人を部屋に呼び込んで情事の真っ最中。クビになったヘレンは家に帰るために地下鉄に乗ろうとします、そして閉じかかるドア。ここでドラマは二人のヘレンを並行して描き始めるのです。地下鉄に間一髪間に合ったヘレンはジェームズ(ジョン・ハンナ)と知り合うことになり、その後ジェリーの浮気を知ることになります。一方、地下鉄に乗りそこなったヘレンは強盗に遭ってしまい、その後ジェリーの浮気を知ることのないままこの優柔不断男に振り回されっぱなし。では、この二人のヘレンは完全に別々の運命を歩んでいくことになるのでしょうか。ドラマは不思議なパラレルワールドの中であるところへ収束していくのでした。
ょっと変わった味わいのラブストーリーになっています。「もし、あそこであの人に会わなければ」「もし、あの時にあんなことが起こらなければ」なんてことを実際に映画の中でやってみせているのです。脚本、監督のピーター・ホーウィットはこの二人のヘレンの成り行きをテンポよくさばきました。完全に二人のヘレンは別々の運命歩んでいくのでしょうか、どっちかが幸福でどっちかが不幸な結末を迎えてしまうのでしょうか。この映画はなかなかよくできた(いっぱいいっぱいという気もしますが)結末を迎えます。そこは劇場でご確認ください。
て、このヘレンという女性はなかなかに面白いヒロインになっています。作家志望というジェリーを養ってるみたいだけど、二人の関係はジェリーが主導権を握っているみたいだし、運命に対してきっちり意思表示をして立ち向かっていタイプの女性ではなさそうです。男にとっては「都合のいい女」というタイプです。彼女を取り巻く男性陣ジェリーもジェームズもその彼女の都合のよさに甘えている部分もあるのですが、その一方、ヘレンもそんなふがいない野郎どもなしではいられない部分があるみたいで、このあたりの男女関係が非常に自然に描かれているところが面白いなと思った次第です。
手をすれば単なるお人好しのネエちゃんになってしまうところを、グウィネス・パルトロウは、ありがちだけど魅力的なヒロインに見せることに成功しています。この人どうも掴み所がなくって、ちょっと見だけでは今一つ印象が薄いのですよ。「エマ」のときのように、キャラクターが乗って初めて魅力が光るというタイプではないかと思います。私から見ると、ともさかりえみたいな感じの人ですが、この映画では、等身大の不器用なヒロインを好感の持てる形で演じきりました。
の一方の男性陣がぱっとしません。ジェリーは優柔不断で浮気相手とも切れないでいて、そのくせヘレンを未練たらたらで追いかけまわすというカッコ悪さ、一方ジェリーと対照的なキャラクターとして登場したはずのジェームズも何だか秘密があるみたいで、こんなのに振り回されるヒロインは気の毒と言うか、やっぱり「都合のいい女」なのかしらん。女性から観てこういうキャラクターってどううつるのかちょっと気になるところです。このヒロインをかわいいと思うか、どっか抜けてると思うかでラストの解釈は変わってくることでしょう。彼女の未来は無限の可能性に満ちているのか、それともどう転んでも分相応に落ち着くのか、でもたかがドアの閉じるタイミングで運命決まっちゃかなわないって気もしますもの。
くある男女のよくある恋の成り行きですが、日本でもありそうなシチュエーションでして、その意味では目新しさはありません。二つのもしもを並行して描いて、きちんと一つのドラマに収束させたそのうまさを楽しむ映画なのかもしれません。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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ヒロインは身近にいたら励ましたくなるタイプ
でも、も少ししっかりせいとも言いたいタイプ
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