夢inシアター
みてある記/No. 79

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ブッダ
ブッダ

手塚治虫原作のスペクタクルロマンの舞台化。大掛かりな舞台装置と斬新な演出、東洋的な音楽が一つになり、悠久の世界をステージに蘇らせる。

98/9/9 新国立劇場・中劇場 にて


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の7日に新国立劇場で初日を迎えた「ブッダ」を観て来ました。

塚治虫のマンガが原作の音楽劇、しかもお堅い国立劇場での上演ですから、その内容はお子さま向けの教育的な「歌って踊るお芝居劇」てなものだろうと、勝手な予想をしておりました。でも実際の舞台は「こんなの今まで一度も観たことない!」という、うれしい驚きに満ちたものでした。

語は仏教の祖・釈迦の半生を描いた伝記ものですが、手塚治虫の原作は、釈迦の周辺にさまざまなキャラクターを配し、この壮大なテーマをドラマチックで親しみやすい冒険娯楽ものとして描いています。

作は全八巻、足かけ12年の歳月を費やした大作ですが、今回の舞台はシャカ族の王子として生まれたシッダルタが出家して修行を積みながらついに悟りを開くまでの過程を描いています。一人の若者の人間的成長を通して生命の尊さと美しさを謳いあげたもので、思想的・哲学的な難しさや堅苦しさは全く感じられません。

ず舞台が始まると、驚かされるのはその舞台装置の奇抜さです。インドの広大な大地を表現するため、とてつもない奥行きのある舞台の後方にはガンジス川が流れています。もちろん本水(ほんみず)を使っているのですが、単なる水たまりではなく、本当に大河が流れているようなスケールの大きさにまず感心させられました。水ばかりでなくホンモノの火も随所に使われています。ガンジス川を流れる無数のロウソクの灯の美しさは、観ているものを異次元の世界に誘ってくれます。さらにその雰囲気を盛り上げてくれるのが東洋と西洋の音楽をうまくミックスした不思議な音楽でして、歌唱力に定評のある島田歌穂と土居裕子が素晴らしい歌声を聞かせてくれます。ミュージカル形式を取っているものの、歌を唄うのは主にこの二人だけであとはコーラスでまとめています。今回、歌の心得のない他の俳優に無理矢理唄わせなかったのは大正解だと思いました。

た、60人にもおよぶコロスたちが舞台の袖に絶えず控えていて、幕を使わず照明と衣装だけで一瞬のうちに場面展開してしまうあざやかな手法にも驚かされます。私はダンスに詳しくないのですが、どうやら踊りの種類もモダンから民族的なものまでさまざまな様式を組み合わせているようです。

優の演技もそれぞれ良かったと思います。特にシッダルタを演じた高嶋政伸はびっくりするほどのハマり役でして、他には中原ひとみが普段とは全く違ったイメージで好演していました。でも、この作品の主人公は俳優ではなくステージそのものです。この舞台、この音楽、たぶん外国でも立派に通用するのではないかと思います。世界中の方々に現代舞台芸術の粋を極めた異空間をぜひ体験して頂きたいものです。

魔女っ子★マキ
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