ちょっと変わった味わいのラブ・ストーリーのような不思議な一篇。
ューゴ(アリッサ・ミラノ)はプール清掃のお仕事で今日もお忙しの日々。ヤク中のリハビリ中の父(マルコム・マクダウェル)には、水運びのトラックを走らせ、ギャンブル狂いの母(キャシー・モリアーティ)にはプール掃除の手伝いをさせます。お客の中には変な奴がいっぱい。ところがあるお客先でALSという筋萎縮性側索硬化症の青年フロイド(パトリック・デンプシー)と知り合い、一日彼を仕事に連れ回す羽目になってしまいます。車椅子で指先でキーボードを叩くことでしかコミュニケーションがとれない彼ですが、なんとなくヒューゴといい雰囲気。そんな中でそれぞれしんどい思いをしている皆様にとって、ちょっと特別な一日が静かに過ぎていくのです。
級脱ぎ女優というイメージがあるアリッサ・ミラノに、マクダウェルとモリアーティ、さらには、ロバート・ダウニーJrとショーン・ペンというキャスティングでどういう映画になるのか見当がつかなくて、その上、宣伝文句が「愛と癒し」ですから、何だか胡散臭い映画という先入観がありました。最近の流行キーワードですからね「癒し」って。実際に劇場で確認したら、何とも不思議な静かなテンポの淡々とした映画になっていました。また、アリッサ・ミラノがなかなかいい味を出して魅力的な一篇になっています。
ラマはプール掃除に回るヒューゴと、変なヒッチハイカー(これがショーン・ペン)を乗せて水を運ぶ父親の2つの物語が並行して流れていきます。両親ともに困った奴等で、何だかカワイソーなヒューゴちゃんという構図ではあるのですが、それが同情を呼ぶような描き方をしていないのには、好感を持てました。何しろ、両親から金をせびられるわ、本人は糖尿病持ちでインシュリンが欠かせないわ、逆境にあるヒロインなのですが、妙に気張ったところもなく、そこそこ明るくて元気。「クスリやセックスにおぼれるのがいやだから、刺青を入れるの」なんてさりげなく言うあたりは、なかなかの説得力でして、見た目は軽そうなナイスバディなねえちゃんが見せる人間的な奥行きを、ミラノが魅力的に演じきりました。
た、ほとんど全身不随に近いフロイドがプール掃除のトラックの荷台で揺れているという絵の妙な可笑しさが印象に残ります。マヌケな絵というのじゃなくて、なかなかにいい絵になってはいるのだけど、なんだか笑えてしまう。フロイドという青年は体中の神経が少しずつ死んでいくという難病なのですが、その逆境の彼がトラックの荷台でほのぼのとした構図を作ってしまうのが、不思議なリアリティと可笑しさを運んでくるのです。トラックが急停車すると、ガタンと前に倒れ込んで動けない、悲惨な光景な筈なのに、なんだか笑えてしまう。この味わいは劇場でご確認ください。
んなフロイドとヒューゴに恋愛感情が芽生え、ラブシーンになるあたりも、あまりドラマチックにならずにさらりと流して、いかにも自然な成り行きという見せ方をしているのが好感が持てました。一方で脇のキャラクターに何だか妙な連中を配していまして、その分も二人の自然さが引き立ちました。クスリが切れそうになるとキッカイなセラピー(本当にあるのかもしれないけど)に走るマクドウェルはどうも変な人ですし、最後まで無表情でまるで天使のようにも見えてしまう(うそでぇー)ショーン・ペンの奇妙さ、完全ブチ切れ状態で最低最悪のロバート・ダウニーJrなどがドラマを引っ掻き回しはするのですが、全体の淡々としたトーンを壊さずに、寓話のような味わいにまとめあげたという印象です。
の映画の監督のロバート・ダウニーの奥さんがALSという病気で亡くなったとのことで、その時の彼女とプール清掃の青年のやり取りをもとにこの映画ができたのだそうです。
ジャックナイフ
64512175@people.or.jp
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最初は、何だこの映画は?って感じでとっつき悪いかも
でも、見終わってからじわじわくるものがあります
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