夢inシアター
みてある記/No.74

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スクリーム2
スクリーム2

-Scream 2-

また出た連続殺人鬼、ホラー映画がまた殺人を呼ぶ、入れ子構造のホラー。

1998.8.15 横浜 横浜オスカー1にて


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作でひどい目に遭ったヒロインのシドニー(ネーブ・キャンベル)は今や大学生、そして、あの事件はレポーター(コートニー・コックス)が本にして映画化もされちゃってます。ところが、その試写会場でまたしても殺人事件発生。ホラー映画が殺人を呼ぶとは、いやな予感じゃございませんか。その予感はあたりまして、またしてもシドニーの周囲で悪魔のマスクをつけた殺人鬼が徘徊し始めるのです。デューイ(デビッド・アークエット)も心配して大学に駆けつけるのですが、果たして連続殺人を止めることできるのでしょうか。

っけから、前作の物語が映画化された、その試写会のシーンです。黒人カップルがホラー映画で黒人が登場しない云々のウンチク話のあと、最初のショックがやってきます。恐怖映画の楽しみ方ってのはこうだぜというシーンを見せておいて、そこにリアルな殺人をぶちこむあたりは、前作でホラー映画と現実の接点を描いたウェス・クレイブン監督らしい展開と申せましょう。前作でも気になったのですが、このシリーズはホラー映画が実際の事件の引き金になりかねないというところをかなりリアルに見せているのです。

作公開のとき、ちょうど神戸の幼児殺傷事件があって、公開時期が延期になりました。ずいぶんとひどい話だなあと怒りながら、実際の映画を観たら、こりゃ公開自粛もありかな?と思わせるものがあったので驚いた記憶があります。この映画そのものが殺人を誘発するかどうかは置いといて、この類の映画が実際の事件の引き金になりうるような描き方をしていたのです。そして、その続編であるこの映画では、連続殺人事件がさらに次の連続殺人事件を呼ぶという展開なのですよ。ホラー映画の中でそこまで見せてしまうのは、いい度胸とも思えますし、一種の開き直りとも取れます。また、基本的にはファンタジーの世界であったホラー映画を、リアルな殺人鬼ものに変えてしまったのです。

画の中で、「続編もの」の定義の講釈がありまして、続編はより多くの犠牲者、より派手で残虐な手口になってくるなんて話していると、実際そういう展開になっていくのがなかなか面白いのですが、これも、現実とホラー映画の入れ子構造になっているところ要注意です。つまり、ホラー映画の続編のセオリーが映画の中の世界では現実化するのです、それもかなりリアルな形で。これは怖いですよ。「スクリーム」というホラー映画が作り出した虚構の世界が、「スクリーム2」の世界では現実化するのです。

はいえ、そういうドラマの構成上の怖さで全編を引っ張ることはしませんでした。ウェス・クレイブン監督は、後半ではまともなホラー映画に路線変更して、娯楽映画として、この映画を終わらせることに成功しました。つまり、「スクリーム」やこの映画の前半で、このホラー映画は観客の現実世界を侵食する可能性を見せておいて、「スクリーム2」は結局は虚構の世界であるという決着をつけてくれます。ただ、決着の付け方が娯楽映画としては今一つでして、被害者の顔ぶれなんて、娯楽映画のお約束を逸脱しちゃっています。ですから、フィクションとして終わるのはいいけど、カタルシスというか、満足度は今一つということになってしまいました。

も、2時間余をずっとドキドキハラハラさせて引っ張っていくのはなかなかお見事です。ヒロインのネーブ・キャンベルは、よりタフでクールなヒロインとして大活躍ですし、前作の面々が再登場するのもお楽しみです。物語は完全に前作をベースにしていまして、伏線もミスディレクションも前作を観た観客を前提にしていますから、御覧になるにあたっては、前作の予習は必須です。でないとお話についていけなくなります。

作同様、ドタバタと走りまわる殺人鬼は一見滑稽にも見えるのですが、そのマヌケっぽさが、かえってリアリティを運んでくるのが怖いです。この殺人鬼の正体は劇場でご確認ください。そして、誰にもお話にならぬように。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点0点0点 先の読めないスピーディな展開がお楽しみ
クライマックスはきちんとお約束踏んでます
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