夢inシアター
みてある記/No.68

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グランド・コントロール 乱気流
グランド・コントロール 乱気流

スペクタクルじゃないけど、なかなかの見ごたえの空港人間ドラマ。

1998.7.20 東京 銀座シネパトス2にて


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と航空管制官のジャック(キーファー・サザーランド)が大晦日のフェニックス空港の管制官のパートタイムに、是非にと頼まれてしぶしぶ出かけていきます。実は彼は優秀な管制官だったのですが、彼が誘導した旅客機が墜落したという過去があったのです。レーダーの画面を見るとそのときの幻覚が彼をよぎります。でもその日は研修明けの新人まで管制業務につぎ込むほどの人手不足状態。その上、電源は落ちるわ、ストレスで切れちゃう管制官も出るわで、ジャックも大忙しで、それでも無事にすべての旅客機を着陸させることができるはずだったのですが。

キセントリックな悪役というイメージの強いキーファー・サザーランドが昔の事故の幻影に悩まされる航空管制官を演じるというちょっと変わった設定です。この航空管制官というのは、飛行場の付近の空の交通整理屋さんという役どころらしいです。飛行機を着陸順にならべたり、高度や方位を修正させたりして、ニアミスのないよううまく飛行場の近くまで誘導して、そのあと管制塔にあずけるのですが、とにかく飛行場近くの空域には飛行機がラッシュ状態で、それをさばくのは大変な集中力と判断力を必要とする大変な仕事のようです。

んな航空管制官の仕事に敬意を表しながら、ドラマは大晦日のあわただしい管制室を丁寧に描いていきます。ベテラン管制官(ブルース・マクギル)若手中堅管制官(ロバート・ショーン・レナード)、新任のチーフ(ケリー・マクギリス)、初めての管制業務の新人(クリスティ・スワンソン)といった面々が過酷な業務に取り組んでいくさまを監督のリチャード・ハワードはハッタリのないリアルな演出でドラマを積み上げていきます。そして、クライマックスで発生するトラブルでも、登場人物たちが対立しながらも協力していくさまがなかなか感動的です。その中で過去のトラウマにとりつかれているジャックの立ち直りを描き、主人公と新人管制官のささやかなロマンスの予感まで、97分を過不足なく描いているのは見事です。

べての登場人物にきちんと人物設定がされており、派手な見せ場はないのに映画を見終わったあとの満腹感はなかなかのものです。ジャックの過去を知ってなめてかかっていた若手管制官がドタンバでジャックにさりげなく協力するところ、チーフがジャックのアイデアを選択する決断をくだすところ、トラブルのあった旅客機の機長とジャックが視線を交わすところなど、各々のシーンに対する人間のリアクションがさりげなく細やかで、うまいなあって感じです。

編のほとんどが管制室の無線とレーダーの前で展開し、旅客機は実写で少々登場というどう見てもお金のかかった映画ではありませんが、それでも見応え十分の娯楽作品に仕上げて、クライマックスでは結構泣かせてくれる映画はなかなかないです。特に役者の演技力がちゃんと生きるドラマになっているのが、テレビ映画とは一線を画す、劇場で観るための映画になっています。

編をドラマチックにサポートしたランディ・ミラーの音楽もまた聞き物でしたし、室内で人物配置にうまみを見せたキャメラも印象的でした。そして、決してハッタリをかまさず、しかし映画のお約束ごとを踏んで、その上で素敵な余韻で映画館を後にすることができますので、「ヒコーキもの? またあ?」などと言わずに劇場に足を運んで確認していただきたいとおもいます。私はこのクライマックスにはかなり泣かされてしまいました。人の命を預かる人間のプライドと不安をうまく見せています。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 いやー意外や意外の感動ドラマはうれしい不意打ち。
ドラマ部分に無駄がないってのはホメ過ぎかな。
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