-kiss the girls-
タイトルから変質者の映画っぽいですが、中身もご期待を裏切りません。
1998.6.28 神奈川 ワーナーマイカル茅ヶ崎シネマ3にて |
シントンDCの犯罪心理学者の刑事アレックス(モーガン・フリーマン)の姪っ子が行方不明になっちゃいます。どうやら誘拐されたらしいです。アレックスが向かったのは事件の起こったノースカロライナ州のダーハムという学園都市。驚いたことに彼女が8人めだと言うじゃありませんか。みんな若くて才能のある女性ばかり。そのうち3人は死体で発見されました。しかし、第9の被害者ケイト(アシュレイ・ジャッド)は謎の誘拐犯カサノバに誘拐されながらも、気丈にも脱出に成功します。そして、彼女の証言から、誘拐された女性の残り5人は生きていることが判明します。そして、アレックスは彼女に使用された薬物のセンから手がかりをつかもうとするのですが......。
わゆるサイコスリラーってやつです。若い女性専門の連続誘拐犯、営利目的じゃないから身代金を要求するわけじゃなくって、単に女性をコレクトするのが楽しいという人、いわゆる変質者を描いた映画なのです。とはいえ、主人公は追う側の刑事です。これが「セブン」「ディープ・インパクト」のモーガン・フリーマンなのですが、いつもの胡散臭さを押さえて、被害者を救うべく奔走する犯罪心理学者を好演しました。また、被害者の一人、アシュレイ・ジャッドは気丈な女医さんを演じているのですが、なるほど彼女みたいなタイプが狙われるのかという奇妙な説得力があるってところが、面白いというか、興味深いと思いました。
して、誘拐されて、犯人に逆らった女の子は殺されてしまうのです。うーむ、変態さんのやることはよくわけがわからんと思っていたのですが、アレックスを始めとする捜査陣が殺人の動機について「これは犯人が与えた罰のような.....」なんて平然と語り始めるところを見ると、こういう変態野郎の行動ってそれほど珍しくもないのかしら。あっと言う間に犯人のキャラクターに近づいてしまう捜査陣を見て、ぞっとしてしまったのは私だけでしょうか。こういう皆様がポピュラーになってしまったのが現代ということなのでしょうね。
トーリーとしては犯人探しの趣もあるのですが、監督のゲイリー・フレダーはミステリーというよりはホラーに近いスリラー演出を重視しているようでして、スローモーションとか、手持ちカメラの不安定な映像などの趣向を使って、狂気と不安をスクリーン上に展開させようとしています。特にケイトの脱出シーンなどの森の描写や、アップを重視した室内のサスペンスなどが印象的です。この視覚的ハッタリは結構有効に作用していまして、ちょっと無理のある展開を全体の雰囲気描写でカバーしているところもあります。誘拐された女性たちが閉じ込められてる牢獄のような地下室とか、犯人のかぶる不気味なマスクといった道具立ても、リアルな犯罪モノとは一線を画しています。
人は結構登場シーンも多いし、セリフもあるのですが、なかなか観客にも正体がつかめません。また、犯人が色々とミスディレクションのための小細工をしているようなのですが、これがあまりドラマの展開上生きてこなかったのは残念に思います。特に犯人のアジトを突き止めるあたりの展開の唐突さもあって捜査モノとしては今一歩の観がありました。その分、ダーハムという土地の雰囲気、広々とした森のその広さゆえの恐怖感といったものが引き立ちました。この森の中に誘拐されて閉じ込められている人間がいる。いることはわかっているのに見つけられない。犯人を殺してしまうと、閉じ込められた人間が餓死してしまう。これは犯人の狂気以前に怖いです。
編を低音の効果音がうなり続けるという音響設計でして、マーク・アイシャムの音楽もその効果音の一部のようにしか使われていません。今回はアイシャムもホラー映画の音をつけています。役者では、ケリー・エルウェス、ブライアン・コックス、ジェイ・O・サンダースといった面々が渋く脇を支えています。ラスト近くに、犯人がケイトに語る変質者の行動あれこれが、もろストーカーの行動パターンなのが笑えて、洒落にならないって感じです。
ジャックナイフ 64512175@people.or.jp
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アシュレイ・ジャッドのタフさはお見事、でも近寄り難いな。 雰囲気描写を楽しむ映画ですね、これは。 |
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