夢inシアター
みてある記/No.64

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ディープ・インパクト
ディープ・インパクト

DEEP IMPACT

隕石激突から地球を救え、予告篇以上に泣かせる映画になっちゃってました。

1998.6.20 静岡 静岡オリオン座にて


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レビレポーター、ジェニー(ティア・レオーニ)はホワイトハウスを巡るスキャンダルを追っかけているうちにエリーという謎の女性にいきあたります。ところがエリーは女性ではなく、ある特別なプロジェクトを指していたのです。大統領(モーガン・フリーマン)は記者会見を開きます。1年前に発見された彗星が進路を地球にとっているというのです。そして、宇宙船メサイア号が、その彗星に核爆弾を仕掛けて進路を変えようとします。しかし、作戦は失敗、メサイア号は行方不明、いよいよ最悪の事態を想定しなければならなくなりました。しかし、メサイア号に希望の灯はまだかすかに残っていたのです。

わゆる、人命救助ものの範疇に入る作品と申せましょう。地球の危機、そして、生き残りの為の方策も手詰まり状態です。選ばれた人間を「ノアの箱舟」に乗せようという最後の選択も始まります。物語はテレビレポーターのジェニーと彗星の発見者リオを中心に進みます。ジェニーと父親の確執、リオと恋人のエピソード、そして、メサイア号の乗組員たちなど、様々な人間ドラマが地球の危機の下で感動的に描かれていきます。自分を犠牲にしても他人の命を救おうという人々のドラマは、特に、後半はかなり泣きの入る展開を見せます。

の映画のすごいと思うのは、こういう地球の危機に瀕して、世界中で暴動や略奪が横行するのですが、そういうシーンを一切見せないということです。そして、ドラマの視点はあくまで理性で行動する人間に限っているということです。この思い切った脚本のおかげでこの映画はパニック映画とは一線を画すことに成功しました。きれいごとと言ってしまえば、確かにそうなのですが、最悪の状況の中で、ここまで人間の希望を描き切るのは結構根性が要るなあと思うのですよ。嘆いたり、愚痴ったりしない人々のドラマの見所は、決して逃げないというところです。大統領のスピーチの中で「神は祈りに応えてくれる。たとえそれがノーだとしても」という言葉があるのですが、そんな思いに貫かれた人々は最善を尽くし続けるのです。

インキャストで有名どころは大統領のモーガン・フリーマンとロバート・デュバルくらいですが、脇でバネッサ・レッドグレーブ、マキシミリアン・シェル、チャールズ・マーチン・スミス、ジョン・クロムウェル、カートウッド・スミスといった面々がドラマに厚みを加えています。こういう人々のドラマが、人の命を伝えていく事の大切さと、また命よりも大切なものの存在を語っていくあたりは、見物です。このあたりはマイケル・トルキンと共同で脚本を手がけたブルース・ジョエル・ルービンのカラーではないかと思いました。このルービンは「ジェイコブス・ラダー」「マイ・ライフ」などで人の生き死にを正面から描いた人です。

覚効果の見せ場はかなりすごいのですが、ドラマの中でそのシーンが浮くことはありません。大津波のシーンも、何だか宗教的な厳かな雰囲気がありまして、映画全体が、一つの寓話のような印象を持ちました。「ピースメーカー」で骨太のアクションを演出したミミ・レダーですが、今回はたくさんの登場人物をていねいに描くことに成功しました。脇の一人一人までこの危機的状況に対するリアクションをきちんと演技させているのです。特にリオ少年とその恋人サラ、そして彼らの両親のエピソードが圧巻です。特に、自分は避難する特権を得たリオが、土壇場でサラのもとへ引き返そうとし、それを最初は引き止めながらも、遂には万感の想いで見送る両親のシーンが泣かせます。この映画後半は「タイタニック」より泣かされてしまいました。

の昔、彗星が地球にぶつかるという設定で日本でも「妖星ゴラス」という映画がありました。その映画でも、多くの犠牲を出しながらも、人間の叡智が危機を乗り越えて行くという物語が描かれました。「ディープ・インパクト」ほど泣きのシーンは入りませんが、根本的なところで両者は結構似ているなと思った次第です。それは、両者とも良くも悪くも「人間の希望のしぶとさ」を描いていると感じたからです。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 主要キャストで生き残れるのは誰た!
色々ケチつけられそうだけど、私はこの映画好き。
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