夢inシアター
みてある記/No.62

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「課長・島耕作」の根岸吉太郎監督が白川道の「海は涸いていた」を映画化、愛するもののために戦う男の孤独な人生を描く。

1998.6.10 ららぽーとシネ1にて


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年公開される邦画のラインナップの中でも特に注目されている「絆」を見て来ました。物語はヤクザの伊勢(役所広司)が街中でキャバレーのホステスに声をかけられるところから始まります。伊勢はホステスを無視してその場から立ち去りますが、その場にいたホステスの愛人がタチの悪い売文屋だったことが災いし、伊勢は思わぬ事件に巻き込まれてゆきます。

にささいなことがきっかけとなって、主人公の過去にまつわるさまざまな出来事が明るみになってゆくのですが、ちょっと込み入ったその展開が大変スリリングでもあり、見ている者は画面にグイグイ引き込まれてしまいます。

去を捨て、他人との深い関り合いを避けて生きなければならなかった一人の男が、命に引き換えても守りたかったものとは一体何なのか? この映画は、ヤクザの権力闘争の渦中に起こった殺人事件を通し、孤児として育った男の人生の悲劇を描いているのですが、一見ストイックに見える主人公の心の中に熱いものが秘められているというイメージは、「レオン」の主人公に通じるものがあります。ただ、「レオン」との大きな違いは、そんな主人公の悲劇を思い切り日本的な因縁話で泣かせるところなのです。最近の邦画は外国映画の影響を受けて、そのまま舞台を外国に移しても違和感を感じさせないような作品が多くなりましたが、この「絆」は呆れるくらい(?)日本的な映画と言えるでしょう。ここまでじわじわとしめっぽくやってくれると、日本人ならやっぱり泣かされてしまいますね。日本人はこういう話には弱いですから(^^;)。

にはともあれ邦画としては久々に見応えのある作品だったと思います。ただ、主演がまたまたあの役所広司なので、作品に新鮮味がないのが残念です(役所さんは好きな俳優さんなんですけどね)。反面大変印象に残ったのが刑事役の渡辺謙でして、貫禄と凄味があっておまけに人間的な深みさえ感じさせる好演だったと思います。一方相手役の麻生祐来は、主人公が心の中で想いつづける人妻の役なのでそれなりの落ち着いたムードが必要だと思うのですが、流行を追いかけた服装センスが役柄とミスマッチで、とても気になりました。

お、この映画には主人公の妹としてバイオリストの川井郁子が出演しています。彼女の弾くペルー民謡「パリオニータ」の調べは、この映画の重要な見所の一つとなっています。

魔女っ子★マキ
88721053@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点1点0点 ラストの愁嘆場がちょっとくどいのが惜しい
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