夢inシアター
みてある記/No.59

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アサインメント
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-THE ASSIGNMENT-

テロリストを追う男たちを描く佳作。いやー、映画を観たなあって気分。

1998.5.23 東京 東劇にて


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ロリストのカルロス(エイダン・クイン)は極悪非道、CIAのジャック(ドナルド・サザーランド)は何度も煮え湯を飲まされています。そんなある日、エルサレムで海軍士官のラミレス(エイダン・クイン二役)がカルロスと間違えられて、モサドのアモス(ベン・キングズレー)に逮捕されます。この事実に目をつけたジャックは、ラミレスをカルロスになりすまさせて、カルロスをKGBに狙わせようというプランを立てます。最初はそんな仕事に加担するつもりもなかったラミレスですが、最後には作戦参加を承諾します。そんなラミレスを待っていたのは、ジャックとアモスによる過酷な訓練でした。そして、ついに、作戦開始となるのですが、思わぬ犠牲を払う事となってしまうのです。

悪非道なテロリストを罠にはめるために、集まった3人の男の物語です。地味だけど実力のある役者がそろっただけに見応えのある作品になりました。主人公ラミレスを中心に罠をはめる側の動きを丁寧にみせたクリスチャン・デュゲイの演出も手堅く、「ライブワイヤー」「スクリーマーズ」のような仕掛けに頼った映画を作った人の映画とは思えないくらい、登場人物のキャラクターをじっくりと丁寧に描いています。

悪なテロリストになるための訓練のシーンをじっくりと見せるあたりも今までの映画とは一味違います。冷蔵庫の中のものを4秒間だけ見て記憶するとか、2ヶ月間同じものを食べさせられるとか、ベッドでの癖をカルロスの昔の女から習うとか、とにかくカルロスになりすますためのありとあらゆる手段がこうじられます。ほんの数時間のなりすましのために何ヶ月もの日数を費やすというのが説得力あります。

して、実際に作戦行動に出てからのサスペンスも派手さがないだけ、リアルで目が離せません。思わぬ展開で、フランスの諜報機関と一戦交えてしまうあたりのアクションもよく見ると結構すごいスタントをやっているのですが、全体を流れる落ち着いたトーンが、そこだけ浮き上がらないようにうまい押さえになっています。クライマックスのラミレスとカルロスが相対するシーンの緊迫感も見事でした。

かし、この映画を支えているは、何よりも役者のうまさだと思います。「レジェンド・オブ・フォール」や「妹の恋人」で身内の尻拭いばかりさせられてきた、エイダン・クインがテロリストに顔が似ていたばっかりにとんでもない血生臭い世界に巻き込まれる不運なキャラクターを熱演しています。カルロスになりきってしまったため、元の生活に戻っても、人が変わったと言われてしまうあたりは気の毒そのもの。エイダン・クインの善良なキャラクターがドラマを盛り上げるのに一役買っています。彼のおかげで、普通の人が裏世界に巻き込まれていく悲劇の味わいも出ました。

方、ドナルド・サザーランドは、最近は偏執的なタイプキャストが多かったのですが、久々に人間としての奥行きのある役を見事に演じきりました。ラミレスをかなり強引に作戦に引きずり込むという役どころですが、ラスト近くでラミレスに脅迫まがいの作戦参加を伝えたあと「私には家族も友人もいない、私にとって大事な人間とは、今まで殺してきた奴と、そして、君だ。」と言うあたりが印象的です。

た、ベン・キングスレーがモサドの捜査官としていいところをさらいます。ポーカーフェイスでいながら、何くれとなくラミレスを気遣う酸いも甘いもかみわけた対テロリストのプロフェショナルを好演しています。同胞であるはずのフランスの諜報員を殺してしまって落ち込むラミレスに「君の死を嘆くより、君が嘆いている方がいい」というあたりがいい味を出し、ラミレスとの別れのシーンもホロリとさせるものがありました。

ロリズムそのものを扱った映画というよりは、その狂気の世界の中で生きる人間を描いた作品と思った方が、しっくり来ます。そして、いわゆるスパイ小説のような世界のリアルな物語を見せてくれるのです。仕掛けに頼らず、役者の演技で骨太のドラマを作り、そこへサスペンスを散りばめていったという感じでして、こういう映画を映画館で観たかったという作品に仕上がっています。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
○ 2点2点2点2点0点 ロングランはないでしょうから、お早めに劇場へ。
ちょっと点数良すぎるけど、好きなんですよ。
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