夢inシアター
みてある記/No.57

dummy
dummy

ナッシング・トゥ・ルーズ
ナッシング・トゥ・ルーズ

-Nothing To Lose-

シチュエーションで笑わせて、役者のうまみがキラリと光る人情コメディ。

1998.5.17 東京 渋谷東急にて


dummy

スの広告会社の重役ニック(ティム・ロビンス)は美人のカミさん(ケリー・プレストン)にも恵まれて、順風満帆の筈だったのですが、ある日早く家に帰ると寝室では情事の真最中。どうやら相手は自分のボスみたいです。ここでブチ切れちゃったニックは家を飛び出して車をムチャクチャに走らせます。ちょうど車が止まった時乗り込んできたのが銃を持った強盗ポール(マーティン・ローレンス)です。ところがニックは全然おかまいなしで車をぶっ飛ばしてアリゾナの砂漠まで行っちゃいます。ところが逆上したときに、財布を車の窓から捨てちゃったものだから、コーヒーの金も強盗に頼る事になっちゃいます。そんなどん底のニックの頭にひらめいたのが、ボスの金庫の大金です。これを盗めば奴に一矢報いることにもなる。それにポールも乗ってくるんですが、いいのかなあ、そんなことして。

「エ
ース・ベンチュラ」や「ナッティ・プロフェッサー」で知られるスティーブン・オーデカークが脚本・監督その上脇役として出演もしているという一品です。下品にならず、くどくならずに笑いをとるあたりのセンスはなかなかのもので、自分も含めて脇役を丁寧に見せて、犯罪ネタでありながら殺伐とならない雰囲気作りが好感を持てます。間のおかしさの笑いを随所にちりばめた細やかさも好きです。ラストのエンドクレジットの後に出るエピローグなんてのも、「そういやそうだなあ、うまいね」と言いたくなるような洒落たもので、この全体を流れる細やかさは劇場でご確認下さい。

者もみなうまいもので、カミさんに裏切られてプッツン来ちゃう主人公を背高キューピーのティム・ロビンスが意外なほどのはまり役で楽しませてくれます。どうしたところで、善良さを払拭できないニックのキャラクターは、彼からにじみ出るものなのですよ。また、マーティン・ローレンスはやかましくしゃべりまくるキャラクターなのですが、後半、彼の家族が登場するあたりがいいんですよ。ホロリとまではいかないけど、ポールのキャラクターに奥行きが出て、単なる賑やかしに終っていません。単なるドタバタにならないで、人情喜劇の味わいが出たのは、彼の家族の中での居場所がきっちりと描かれていたからでしょう。また、出番は少ないですけど、「エージェント」「恋におぼれて」のケリー・プレストンは相変わらず魅力的です。

会いとしては、お互い最悪なのですが、それが段々とお互いを認め合うようになる。そのお互いのキャラクターの立て方が非常にうまいです。どっちがどっちに依存するという関係ではないのですが、きちんと両方にうまいバランスで花を持たせたオーデカークの脚本が見事です。こんな話なら、日本でも作れそうな気がするのですが、日本映画でこういう話の喜劇を作ったとき、果たして劇場まで足を運ぶ気になるかどうかというのがちょっと疑問です。でも、よく見りゃ他愛ない話なんですよ。ところがそれを丁寧にキャラクターを積み上げて、ほのぼのとした笑いにまとめながら、一本の映画を観た気分にさせるってのは、結構難しい仕事なのかもしれません。「裸の銃を持つ男シリーズ」なら別にビデオでも構わないけど、この映画はやはり劇場で観ることをお薦めしちゃいます。映画としての華があるとでも言うのでしょうか。

末も予定調和と言ってしまえばそれまでなのに、なんだかうれしくなるような決着の付け方をしてくれます。人死にも出ない、典型的ハッピーエンドですから、最近の映画が殺伐すぎて、ついてけない方にもお薦めです。あまりお客さんの入りはよくなかったですけど、「タイタニック」で感動するばっかが能じゃないです。この作品とか、「ディディエ」みたいな楽しいコメディに、もっとお客さんが集まるといいのになあ、と心から思います。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点1点0点 疑惑に始まり、善意で終わる、出来すぎみたいだけど、それが映画。
ティム・ロビンスが今回は普通の人っぽいです。
dummy