-Jackie Brown-
現金密輸に関っていた中年スチュワーデスが悪玉を相手に一世一代の勝負に出る。タランティーノ最新作は、犯罪ドラマでありながらラブストーリーとしてもなかなかのもの。
年のちょっとくたびれたスチュワーデスが主役を張る「ジャッキー・ブラウン」は、タランティーノが監督・製作などで関った映画の中では一番とっつきやすい作品だと思います。まず暴力場面がソフトですし、観客を置いてきぼりにするような独善が感じられないのもいいですね。また、今回はなによりもストーリーが面白くて目が離せませんでした。序盤、登場人物の背景説明が長くてじれったい感じはしますが、演じる俳優がそれぞれ魅力的なのでズルズルと引きずられてしまいました。
の物語のヒロイン、ジャッキー・ブラウン(パム・グリア)は、三流航空会社のしがないスチュワーデスです。当年とって44才の彼女は、過去にいろいろあったみたいで、今では武器密売人オデール(サミュエル・L・ジャックソン)の現金密輸を請け負っています。ところがオデール逮捕を狙う刑事レイ(マイケル・キートン)らが、彼女をでっちあげの麻薬所持で逮捕、オデールの情報を吐かないと刑務所送りにすると脅して来ます。逮捕がバレれば今の職場もクビになってしまうし、44才という年齢からして再就職はもう無理。かと言って情報を流せば自分の命が危ない。さぁて、わがヒロインはこの危機をどう切り抜けるのでしょうか?
ずこの映画、ジャッキー・ブラウンが登場する導入部分がすごくかっこいいです。ジャッキー・ブラウンを演じたパム・グリアは、肉付きが良いのですがブヨブヨしたところがなく筋肉質で、がっしりした印象です。人生の酸いも甘いも知り尽くしていて、どんなこともクールな笑みでかわしてしまうような度胸の良さが感じられる一方、ちょっと疲れていてだるそうな風情がまた魅力的です。頼りになる姉御肌のようでいて、その中にあやうい脆さが垣間見える・・・心ある男なら、そんな彼女の弱いところをちょっぴり応援したくなっちゃうというのもわかるような気がします。また、映画の中では彼女の過去や現在の私生活(特に男関係)について全く触れていないのですが、説明がなくても彼女がどんな人生を歩んできたのかなんとなく想像つくのがいいですね。黒人の中年のおばさんとしてのヒロインを、不幸な過去だとか、恋愛や母性に絡ませて妙に湿っぽく捉えることもなく、また人間ばなれしたスーパーウーマンとして描いているわけでもない、こういうヒロインの描き方は今までになかったと思います。
んな彼女に一目ぼれしたのが保釈金融業のマックス(ロバート・フォスター)で、実はこの映画はスリリングな犯罪ものであると同時に、中年男女のプラトニックな恋愛を描いたラブストーリーでもあるわけなんです。アカデミー賞のTV中継で、助演男優賞にノミネートされたロバート・フォスターを見た時は「誰?この人?」と思ったのですが、本作を見て「なるほど」と納得させられました。ヒロインもかっこいいですが、このオヤジもまた実に渋くていい味出しているんですね〜。孤独な生き方を最後まで崩さないヒロイン、そしてそれを静かに見守るオヤジ・・うーん、中年の恋はこうでなくっちゃ!
デールの相棒と愛人を演じたロバート・デニーロとブリジット・フォンダは、それぞれビッグなスターでありながらその末路はとんでもなくあっけないものです。普通なら3番手あたりの俳優が演じても不思議でない役柄を彼らみたいなスターが演じるなんて、うーん・・・実に贅沢だ! でもどうしてこんなところに彼らが出演しているの?という違和感はありますね。そこがまた面白いところなんですけど。ブリジットが日本で撮ったという写真の話なんて全体のストーリーには全く関係ないし、手抜きを絵に描いたようなデニーロとのファックシーンもしかり。でも何となく可笑しくて妙に印象に残るシーンでした。そんな彼らが演じた脇役のキャラクターが、この映画の中で一番タランティーノらしさが出ていたように思います。
魔女っ子★マキ 88721053@people.or.jp
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タランティーノ映画はどうも苦手 という人にこそお薦め |
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