夢inシアター
みてある記/No.52

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恋愛小説家
恋愛小説家

-As Good As It Gets-

ジャック・ニコルソン主演の恋愛コメディ。役者のうまさが光る逸品。

1998.4.12 横浜東宝シネマ1にて


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愛小説で愛をささやく作家メルビン(ジャック・ニコルソン)の実体は、病的潔癖症で人間嫌いの毒舌家。行き付けのカフェでも相手してくれるのは、シングルマザーのウェイトレス、キャロル(ヘレン・ハント)位なもの。ある日、向かいの部屋のゲイの画家サイモン(グレッグ・ギニア)が強盗に入られて大怪我、そして成り行きから、サイモンの飼い犬の世話を押し付けられちゃいます。ところがこの歩く毛玉のブサイクなワン公がメルビンになつくあたりから、彼のまわりがすこしずつ変わり始めます。キャロルの病気持ちの息子にいい医者を紹介したり、サイモンを励ましちゃったり、ちょっといい人になっちゃうサイモン。とはいえ、自分がキャロルに恋に落ちてるだなんて、認めるわけにはいかない難しい性格なのでございましたが.....。

っけから、すごーくやな奴として登場するニコルソンが笑いをとります。いつものスゴ味を極力抑えて、ちょっと偏屈で小回りの効かないキャラクターを飄々と演じています。へー、こういう役もこなすんだ、さすが役者だなあって、この人これでオスカー取ったんですもの。そうそう同時に受賞した、ヘレン・ハントも、理想の女性のような、それでいてリアルな悩めるヒロインを好演しています。ドラマの中で彼女が天使のように見える時があるんですよ。その一方で病気持ちの息子を懸命に育てながら、自分の幸せも見捨てていない生身の女性の一面を覗かせるあたりが見事です。

トーリーだけ追っていくと、ちょっと変わり者のオヤジの恋愛ドラマということになるのですが、登場人物のキャラクターを丁寧に描くことで人間ドラマとしての奥行きが出ました。脇のグレッグ・ギニア、キューバ・グッテンバーグJrといった面々も彼らの人生を感じさせる描き方をしてあって、特にオスカーにノミネートされただけあってギニアの好演が光ります。(オープニングでメルビンにやりこめられて涙目になっちゃうあたりがケッサク)彼が最終的に恋の橋渡し的なポジションに立つわけですが、彼のいい人ぶりがこの映画のカギになっています。また、歩く毛玉のワン公(はっきり言ってかわいくない)がドラマの要所要所でいいところをさらいます。このワン公と五分に渡り合うあたりが、ニコルソンの底力なのでしょう。

ルビンの言動は皮肉っぽくて毒があって、人から嫌われる典型です。それなのに、キャロルのような女性から好かれる展開はちょっとうますぎるような気もします。こういうタイプは孤独死が関の山だとも思ってしまうのですが、そこに映画の魔法を感じてしまいます。人間どこかにいいところがあって、それを見つけてくれる人がいる。いいところを愛してくれる人がいる。

ルビン、キャロル、二人ともどこか欠点のある人間で、生きてくことがあんまりうまくないタイプです。でも、お互いのいいところ、誉められて一番うれしいところを言葉にして認め合うことができるのです。この言葉にできるってところが肝心でして、映画の中盤、デートの時にメルビンの言動にキャロルが一喜一憂するあたりがおかしくもリアルです。ついつい、言わんでもいいことを口に出しちゃうんだよなあ。それも言った時には気が付かなくて、その時の相手の顔色の変化も読めなくて...なんて言うと個人的グチになりますが、デートでドジを踏んじゃうメルビンの失地回復の展開は劇場でご確認ください。

ェームズ・L・ブルックスの演出はコミカルで暖かみがあって、ラストをロマンティックにまとめています。意外性とか、ドラマチックな展開といったものはありません。でも、そこに展開する設定の面白さと役者のうまさで時に笑わせ、そしてホロリとさせてくれます。自分の中に湧き上がった恋愛感情をどう扱っていいやらオタオタするメルビンとか、自分の目先の問題に目処がついて一呼吸置いた途端、孤独に落ち込んじゃって自己嫌悪になっちゃうキャロルとかが、結構身近に感じられるあたりのうまさに感心してしまいました。アカデミー監督賞にノミネートもされなかったのがちょっと不満。主演賞のダブル受賞もこの監督あってのものだと思います。

ジャックナイフ
64512175@people.or.jp

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点0点 ちょっと落ち込み気分の人も笑って元気が出る映画をどうぞ。
いやー、いいもの見せてもらいましたわー。
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