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カチンコ ラジオの時間

魔女っ子★マキ
(88721053@people.or.jp)
'97/11/14 新宿コマ東宝にて
舞台やTVの脚本でおなじみ三谷幸喜の初監督作品。邦画が苦手な皆さん方にもぜひお薦めしたいコメディーの快作です。

この映画の舞台は深夜のラジオドラマの収録スタジオです。シナリオ公募で主婦みや子(鈴木京香)の書いた「運命の女」が優秀賞に選ばれました。それをいまどき「生」で放送してしまおうという面白い企画が持ち上がり、素人のみや子は番組担当者 から「先生」と呼ばれ、うれしいやら恥ずかしいやらで舞い上がっています。けれど、無事リハーサルも終わりいよいよ本番を待つばかりという時になって、ヒロイン役の大物演歌歌手、千本のっこ(戸田恵子)が突然役名が気に入らないと言い出しま した。あとで聞けばこのシナリオ公募に応募したのはみや子一人だけだったらしく、生放送になったもの収録に余計な時間を取られるのがイヤだというのっこの「鶴のひと声」で決まったらしい・・・。

結局、いんぎん無礼で優柔不断なプロジューサー(西村雅彦)と、いいかげんなラジオ局のお偉いさん(布施明)のおかげで、、あれよあれよという間に登場人物は全て外国人に、メロドラマだったストーリーも一大スペクタクルへと書き直されてしまいました。収録スタジオという限られた空間と、生放送という時間的な制限の中で、番組担当者、出演者たちのエゴによってりつ子の脚本がなし崩し的に変更を迫られていく様子が、爆笑に次ぐ爆笑の快調なテンポで描かれてゆくわけです。切羽詰まった状況下での人間喜劇を描き続けてきた三谷作品の中でも、本作はその特徴と魅力がストレートに表れた一作と言えるでしょう。

三谷さんはこの映画を作るにあたり、いままでにない日本映画を目指したと言っています。なるほどこの作品、三谷さんの舞台をご覧になっていない方の目には大変新鮮に映るのではないかと思います。ロケもなければ凝った映像もない、ちょっと音楽 にこだわりが感じられるものの、全体として舞台劇そのまんま、ちっとも映画らしくないところが逆に魅力になっています(ラジオに聞き入るトラックの運ちゃんの描写など特にそう感じます)。また、映画(特にコメディー)は主演級の俳優のキャラクターに頼りすぎ、ワンマンショー的なものが多いですが、この作品は登場人物それぞれバランス良く面白いい見せ場があります。この辺も、舞台劇の魅力をそのまま持ってきている感じです。

出演俳優の中で特に面白かったのはみや子の夫を演じた近藤芳正(三谷作品の常連俳優です)と、ラジオドラマの中でのっこの相手役を演じた細川俊之で、二人ともコメディーではない大真面目な演技でお客を大いに笑わせていました。人気の西村雅彦は今回、出演者の引き立て役に回っています。

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点2点1点 今年一番笑ったコメディーです。
笑いすぎて化粧がはげてしまいました ^^;