![]() |
![]() |
ニューヨークのタクシー運転手ジェリー(メル・ギブソン)は「この世は陰謀だらけだ」と喋り捲る変な奴。さらに、司法省のアリス(ジュリア・ロバーツ)の部屋を覗いて愛の言葉をささやいてしまうアブない奴。そんな彼は「陰謀のセオリー」なる小冊子を書いてはあちこちに送り付けているようです。ところがある日、ジェリーが変な連中に拉致されてしまいます。なんとか逃げ延びるのですが、どうも「陰謀のセオリー」がその原因のようです。アリスのところへ駆け込んだ彼ですが、結局逮捕されてしまいます。そして、刑事やCIAもジェリーを追いけていたのです。ちょっと見はただのアブナイ人でしかないジェリーには一体どんな秘密があるのでしょうか。 この映画は、ストーリー展開を楽しむ映画ですので、白紙の状態で臨みたい方はこの後は読み飛ばして下さい。さて、この映画はあるでっかい陰謀に巻き込まれた主人公が追手から逃げ回る物語です。なぜ、彼が追われるのかその辺は劇場でご確認頂きたいのですが、一見、単にストーカーされてるだけのアリスが段々とドラマの中で重要な鍵となってくるところが見所です。職人監督リチャード・ドナーがギブソン、ロバーツのスターを使ってストーリー主体の娯楽映画に仕上げました。 ギブソン演じるジェリーってのは、自分の部屋に帰るのにも非常階段を使ったり、冷蔵庫に鍵を付けたり、さらに、部屋に、侵入者を想定したとんでもない仕掛けまでつけてる変なやつ。ところがその異常な用心深さが彼を救うという展開が面白いです。孤立して四面楚歌の主人公がいかに敵側組織の追手から逃げるのかが、知恵と偶然を張り巡らした脚本で、笑いも交えてうまい展開を見せます。そして、単なる逃げ回るだけかと思っているとジュリア・ロバーツ扮するアリスが、真相へのアプローチを図ってくるあたりから、ドラマとしての盛り上がりを見せじめます。 最初から悪役として登場するパトリック・スチュワート(スタートレックのピカード艦 長さんです)がしぶとい悪党ぶりで、ジェリーやアリスを追いつめていきます。消音機付きヘリコプターから追手が繁華街へロープを伝っておりてきて、雑踏に紛れ込むシーンが印象的でした。この追手の皆様が、訓練された組織の人間って感じでして、これではジェリーに勝ち目はなさそうです。 ジェリーが単にアリスに惚れて彼女に接近してきたのではないらしいというのがわかってくるあたりから、ミステリーとラブストーリーが交錯し始めます。後半はアリスが主役となって巨大な悪に立ち向かうという展開がなかなかに見応えがあります。ジェリーの過去とか悪者の正体といった謎が、少しずつ見え隠れしていくうちに、ラスト近くでやっと全貌が判明するあたりの構成は見事です。観客をイラつかせないで、引っ張っていくあたりはドナーの演出力なのでしょう。 ラストはラブストーリーとしてまとまるあたりもうれしいところです。コメディタッチで始まって、ミステリー、サスペンス、アクション、ラブロマンスと娯楽映画の色々な要素を過不足なく取り込んで、映画は大団円となります。最後もブチっと切って落とすエンディングでなく、キチンとエピローグがつくあたりにも作り手の余裕を感じさせます。
|