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カチンコ マルタイの女

魔女っ子★マキ
(88721053@people.or.jp)
伊丹映画もいよいよ二桁になりました。10本目に当たる「マルタイの女」は、警察による身辺保護を題材にした「女シリーズ」としては第5作目作品です。

「マルタイ」とは、警察用語で「身辺保護の対象者」の意味だそうです。「ミンボーの女」を監督した際、暴力団に襲われて自ら「マルタイ」になったその実体験を元に映画化したそうですが、それにしても「転んでもタダでは起きない」伊丹監督らしい逸話ですね。

お話は、ベテラン大女優ビワコ(宮本信子)が 偶然弁護士の殺人事件を目撃してしまったところから始まります。犯人はほどなく逮捕されますが、彼の所属するカルト宗教集団は、証人であるビワコを脅して証人台に立つことを邪魔しようとします。ビワコの身辺保護をする刑事が西村雅彦と村田雄浩で、その上司が名古屋章、カルト集団の悪徳弁護士に江守徹、ビワコのお手伝いさんに あき竹城、ビワコの愛人に津川雅彦といった個性的な顔ぶれが次々登場し、それぞれ笑いのツボを押えた手堅い演技で大いに楽しませてくれます。特に江守徹の「竹村風バーコード」はケッサクでしたね。胡散臭くて安っぽい弁護士を気持ち良さそうに怪演しておりました。

今回は企画協力者として人気脚本家の三谷幸喜を迎えているため、三谷作品でおなじみの顔があちらこちらに見えるのがお楽しみです。また、「いかにも三谷風」のセリフが随所にあるのも三谷ファンにはたまらない魅力です。ただ、笑いの部分を西村雅彦はじめとする三谷一家に頼りすぎているのでは?という印象を持ちました。クライマックスが全部西村がらみというのもちょっと気になりますね。

伊丹映画はいつも題材のユニークさが魅力の一つとなっていますが、今回はヒロインが芸能人であるという点が今一つ新鮮味に欠けるように思います。また、警察内部の話はTVや他の映画でよく取り上げられているテーマなので、今までの作品のように私達の知らない「ハウツーもの」をわかりやすく見せてくれるという面白さはありません。登場するカルト集団も、某宗教団体が起した実際の事件のほうが映画よりもはるかに恐ろしいことを私達は実感として知っているので、悪役としての怖さとか迫力に中途半端なものを感じてしまいました。

一方ヒロインのキャラクターや、彼女を取り巻く周囲の人たちはよく描かれていて、お笑いの中にそれぞれの人柄を感じさせる作り方はさすがだと思いました。特にヒロインの愛人を演じた津川雅彦は、出番が少ないのにとってもいい味を出しています。ヒロインと彼との大人の関係が、このコメディー映画にほろ苦い後味を残して好印象です。

お薦め度 採点 ワン・ポイント
◎ 2点2点2点(6/10) いろいろケチは付けましたがそれでもコメディーとしての期待は裏切らないです
最後のオマケがあるのですぐに席を立たないようにしましょう