みてある記 ロゴ25pt.

カチンコ レリック

ジャックナイフ
(64512175@people.or.jp)
'97/6/7 横浜 ムービル1にて
ゲテモノホラーの面白さと気色悪さ、でもちゃんと娯楽映画してます。

ドーンという音とともに「レリック」のタイトル。オープニングはブラジルの未開の部落の儀式のシーンから始まります。そこに居合わせた学者風の男が何やら薬のようなものを飲まされて、「げげーっ」となって、舞台はアメリカのシカゴ歴史博物館に移ります。行方不明の人類学者から送られてきた荷物は、へんなカビのようなものがついた葉っぱ。一方、ブラジルからの貨物船で奇妙な惨殺死体が発見され、それと同様の殺人事件が博物館の中でも発生します。死体の脳からは脳下垂体が抜き取られていました。ダガスタ刑事(トム・サイズモア)は博物館に何か人知を超えたものの存在を嗅ぎ取ります。一方進化生物学のマーゴ(ペネロープ・アン・ミラー)は例の葉っぱから、驚くべき事実を発見します。恐るべき殺人鬼はいよいよその姿を現わし、犠牲者を増やしていくのです。

オープニングはなんだかその昔のゾンビ映画「サンゲリア」を思わせます。奇妙な儀式とか、無人の船、惨殺死体という道具立て。B級ゲテモノの匂いぷんぷんといったところですが、それが博物館に舞台を変えると、1980年代の連続殺人鬼モノの様相を呈し、ビックリドッキリのショック演出と、無邪気な程の残酷シーンでちょっとレトロな味わいもあります。当時のホラー映画お得意のコケ脅しのシーン(何か来るぞ思わせておいて、結局ナーンダというオチをつけるパターン)も交えて、心臓によくない展開で突っ走るのかと思いきや、中盤からはSFっぽい展開から、パニック映画のような様相も見せはじめ、後半はハイテクを駆使した怪獣映画のようなノリになってくるという、博物館を舞台にしながら、映画そのものもゲテモノSFの博物館といった趣があります。

色々な映画から趣向を取り込んでいまして、私が気がついただけでも「サンゲリア」「原子人間」「エイリアン」「ジョーズ」「アリゲーター」「ゾンバイオ」などなどが見てとれました。また、ドッキリとかグロな趣向もかなり盛り込まれていますけど、そこは職人監督ピーター・ハイアムズが「過ぎたるは及ばざるがごとし」をよく心得て、娯楽エンターテイメントに仕上げています。要所要所はキチンとこわく、気色悪いところは気色悪く、そして神話の世界から抜け出たような怪物が暴れまわるところは、きっちり怪獣モノの作りになっています。このあたりのバランスの良さが、一本の映画として上々の仕上がりです。

主役ともいうべき怪物は、最初はなかなか姿を見せないのですが、グリフォンとエイリアンを足したようなキャラクターで、後半では出ずっぱりで大暴れしてくれます。一応、人間を襲う理由付けはされているのですが、そんな事はどうでもよくなって、ひたすら怪物の暴れっぷりを堪能する方が楽しめる映画です。

ヒロインのペネロープ・アン・ミラーが、結構おっとり系の美人なのですが、後半の闘うヒロインぶりもカッコ良く決まりました。リンダ・ハントとか、ジェームズ・ウィットモアといったベテラン陣が、映画にある種の核を与えるのに成功しています。ドラマの本筋とは直接関係ないのですが、博物館周辺のパニック描写とか、警察官が中の人間を救出しようと、博物館に入り込もうとすると、ことごとく怪物に食われちゃうとあたりが結構印象に残ります。ストーリーだけ見ると1時間50分は長いかなという気もしたのですが、映画を観ている最中は、そういう事を感じる事もなく、かなりお金をかけているゲテモノを堪能してしまいました。

お薦め度 採点 ワン・ポイント
△ 2点2点2点1点(7/10) でも、くたびれる程怖い映画ではないです。後半は活劇ですし
ホラーというよりはモンスターな映画