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<出演>
<あらすじ> 大和の頭、エウタリとオトウタリは、大勢の従者を従え出雲の女王ヤガミヒメの婿選びの場に、自分こそ夫に相応しいと、意気揚々とやってきた。従者の中には、卑しい沼のばばあの息子オオナムチも混じっており、彼は因幡の海岸で怪我を負った白うさぎを介抱する為に一行から遅れてしまう。 だが、その白うさぎはヤガミヒメが男達の優しさを試す為に姿を変えていたのだった。イズモの神の宣託は、オオナムチを婿に迎えよというもの、卑しい従者が選ばれ、怒ったオトウタリはイズモの王となったオオナムチを、罠にかけ真っ赤に焼けた大岩の下敷きにして殺してしまう。 だが、人は、一生に一度だけ、亡くなった人の力で救われると言う定めによって、育ての母である沼のばばあがあの世からやって来て、必死の祈りで生き返らせる。実はオオナムチは神々の最高位に位置するアメノミナカミヌシとカミムスビとの間に出来た許されぬ子であり、それゆえ、口の堅い沼のばばあに預けられたのだった。 だが、執念深いオトウタリは、蘇ったオオナムチを再び大木の裂け目に挟み殺そうとし、さらにヤガミヒメへの復讐の為、イズモの宮殿を襲いに出かける。実母であるカミムスビは、オオナムチを大木から救い出し、黄泉の国への通行手形を渡して、スサノウノミコトのもとへ身を隠すように薦める。 黄泉の国へ赴いたオオナムチは、スサノオの試練を次々に打ち破り、新たな強い霊力を得て、スサノオの娘スセリヒメと共に地上へ戻ると、兄エウタリを殺し恐怖政治を大和に繰り広げていたオトウタリを倒し、新しい大和の王となった。 人々の為、幸せな国を作ろうと、海の彼方から流れ着いたスクナヒコナを国造りの顧問とし、オオナムチは、人の心を信じ豊かな国を作っていった。人々は感謝の気持ちからオオナムチにオオクニヌシの名を捧げ、三十年の月日が過ぎていった。しかし、天上では、アマテラスの計略で、オオクニヌシに大和の国を譲らせ、自分の息子、筑紫に降臨したニニギノミコトに日の本の国を収めさせるよう、アメノミナカヌシへ提案がなされていた。オオクニヌシの出生をそれとなくにおわせるアマテラスに、アメノミナカヌシも、カミムスビも我が子を庇う術もなく、ニニギノミコトへの大和の国譲りを許すのだった。 <感想> いやぁ、スペクタクルなんですよぉ。でも、暗い。一幕は、因幡の白兎とか、スサノオとの試練とか、結構英雄伝っぽくて面白いんでが、やっぱりこれは、滅びの物語なので2幕、3幕は暗いです。特に、3幕はオオクニヌシの一族が次々に死んでいくので、辛いですねぇ。 しかし、神話を良く人の話にしてあるとは思いました。天上の神々はちゃんと神様なんですが、オオクニヌシとかスクナヒコナなど、地上の神様達は人間として書かれています。それに、国津神−オオクニヌシなどの、日本土着の神様、イコール、大和の現地民と、天津神−ニニギノミコトなど高天が原から降臨した外来の神様、イコール、大陸からの侵略者、という図式が明確に描かれていて、話としてはとても分かりやすい物になっています。 特に、スクナヒコナの神様の扱いが好きです。神話では海の彼方から小船に乗ってやってきた小さな神様で、日本に農耕などを教えてくれ、オオクニヌシが国譲りをする時に、常世の国に帰っていく神様なのですが、ここでは、国破れ漢の国から逃れてきた王子と言う設定で、自分の知識を全て教え尽くしたので、もうこの国にいる理由はないと、小船で常世の国=死を目指して出発するのです。結構このシーン泣けます。 役者としては、今回スーパー歌舞伎に初出演の、團蔵さんのオトウタリがすっごく良いです。もう、いっちゃってる演技。オトウタリは1幕の悪役で、幕の最後に討たれるのですが、やっぱり悪役が立っていないと、主役が立たないっていう良い見本で、すっごく憎たらしい悪役です。ちょっと、デニス・ホッパーとか入ってます(本人も、ジャック・ニコルソンを目指したってプラグラムに書いてありましたが)。 私の贔屓の笑也は、今回ヤガミヒメで1幕は奇麗なお姫様ですが、2幕は年老いて狂った女。オオナムチを探して諸国を廻り、やっと巡り合えた時は、狂っていて彼の姿さえ分からなくなっているという、難しい役ですが出演時間は短くて、ちょっとがっかりです。女性の役では、スサノオの娘、スセリヒメの方が見所のある役です。 右近は、とても良くなっていました。猿之助のコピーから、自分の芝居へようやっと行き着いたと言う感じですね。特に、高天が原の謀議のシーンで出て来る、ニニギノミコトの外戚にあたるタカギノカミという老人の役が良かった。 猿之助さん、やっぱりお年のせいでしょうか、ちょっと殺陣の場面など息切れぎみでした。去年のカグヤは、笑也がメインだったのでそれほど感じなかったのですが、そろそろ、メインは無理でしょうか? でも、私は猿之助さん、演者としてより演出家として好きなので、そちらで頑張って欲しいものです。 遊−A |