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トム・クルーズ演じるジェリーは凄腕のスポーツエージェント。スポーツ選手のマネージメントからコンサルタントまで一手引き受けといった立場です。ところがある日、自分たちは選手を単に食い物にしてるんじゃないかしらと思いついて、思う所を提案書にまとめて会社に提出したらあっけなくクビ。お客はかつての同僚にごっそり奪われ、婚約者を失い、彼の味方はシングルマザーの事務員と中堅フットボール選手だけ。ビジネス的には負け犬ジェリーなのですが、結構へこたれないんですよ、この3人が。 スポーツエージェントなんていう目新しい職業よりも、もっと普遍的な生き方についての楽しい一編になっています。今回のトム・クルーズはとにかく一生懸命。そりゃエリートサラリーマンがかっこよく理想をぶち上げた挙げ句にクビになっちゃってんですのもの、会社に一糸報いたいという気持ちで一杯です。ところが、そういうジタバタぶりが結構カッコ悪いのです。そして、カッコ悪い挙げ句にビジネス的に負け戦。スマートな二枚目のメッキは案外もろいものです。 でも、彼を支える人間が魅力的です。シングルマザーのドロシーは彼の人間的な魅力に惹かれ、一緒に会社をやめて、彼を支えます。人間的な尊敬が愛情に変っていくのですが、ジェリーがビジネスに心を奪われて自分に向ける心を失ってしまうと、身を引こうとするあたりのドラマはさりげなくも見応えがあります。とびきりの美人でないレニー・ゼルヴィガーが可愛さの中に意志の強さを見せて好感度大です。一方、ジェリーの唯一のお客ロッドが、ジェリーとの間に持ちつ持たれつのいい関係を築いていくのが見物です。また、この2人をさらに支えるドロシーの姉とか、ロッドの奥さんの存在がきちんと描かれていて、ドラマに説得力と奥行きを与えています。そして、最後には、ジェリーは周囲の人々に支えられ、自分を完全にするもの、自分を満たすものを見つけ出すのです。 また、この映画では、ジェリーの人間としての成長を、本人が意識しない形で描いているところに味があります。映画が始まった時とエンディングでは、明らかにジェリーは別の人間になっているのですが、当の本人にはそういう意識はないようです。彼は、今に対して一生懸命、それに未来にも問題は山積みという状況です。ところが、そんな状況がハッピーエンドに見えてきて、なかなかいけてる後味です。自分や、身近な他人の価値を見出せなくなっている人には、ちょっとうれしい映画だと思います。 全体として、細やかなエピソードを積み上げて2時間18分という時間をまるで感じさせない娯楽作品に仕上がっています。笑いもあれば、涙もあり、恋愛、夫婦愛、家族愛とたっぷり盛り込んで、しかも重くない映画。ご夫婦、恋人同士でのデートコースのお供にどうぞ。
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