みてある記 ロゴ25pt.

シルクハット アニーよ銃をとれ

おゆう
新宿コマ劇場にて
1946年ブロードウェイ初演の超有名ミュージカル「アニーよ銃をとれ」を新宿コマ劇場で観てきました。

主な出演者
アニー・オークリー高橋由美子/フランク・バトラー石川禅
ドゥリー・テイト麻倉未稀/チャーリー・ダヴェンポート今村ねずみ
トミー畠中洋/ウィルソン&ポーニー・ビル高品剛
シッティング・ブル小松政夫/ウィニー徳垣友子
<あらすじ>>
オハイオ州の貧しい山育ちのアニーは男勝りの射撃の名手。幼い時から鳥などを射止めては売り歩き、家計を助けていたが、ある日町へやってきたワイルド・ウエスト・ショーの看板スターで、ライフルの名手フランク・バトラーに出会って一目惚れ。彼と射撃の腕前を競って負かせてしまうが、その腕の良さを見込まれて一座の座員に迎えられる事となった。一時はいいムードになるアニーとフランクだったが、フランクを喜ばせたい一心で練習を重ねるアニーの射撃の技術に益々磨きがかかり、人気が出た事が面白くないフランクは、とうとう一座を飛びだして、別のショーに行ってしまう。時が移り、再び出会ったアニーとフランクは、またしても我こそが一番とばかりに、射撃の腕を競おうとするのだが、親代わりにアニーを可愛がっているインディアンの酋長、シッティング・ブルは「銃じゃ男は打ち落とせないよ。」とそっと諭すのであった・・・。

日本でも初代アニーを演じた江利チエミ('64)の時代から、桜田淳子('80)、島田歌穂('89)と受け継がれている古典的ミュージカルなのに、今まで一度もきちんとこの作品を観た事がなかったのですが、今回は演出に「エリザベート」など多数の秀作を生み出している、宝塚課劇団の小池修一郎氏があたるというので、小池氏の信奉者としては、一度は観ておかなければと思い、20年ぶりくらいに新宿コマ劇場まで出かけてみました。

観ようと思った理由がこんなものですし、主演がアイドルの高橋由美子という事と、あまりにもオールドファッションな作品だな、という思いがあったので、過度な期待は止めようと、無意識のうちにブレーキをかけての観劇となってしまったのですが、ところがどっこい! エンターテイメントに徹したゴージャスで愉快な作品となっていて、本当に思わぬ拾い物をした気分でした。広い観客層が喜びそうなハッピーな作品作りという点では、さすが東宝ミュージカル、さすが小池氏でしたね。

最早スタンダード・ナンバーに数えられて久しい「ショーほど素敵な商売はない」や「恋はワンダフル」「朝の太陽」などなど、耳に馴染んだ曲が次々登場するのでミュージカル・ファンとしては、つい一緒に口ずさみたくなってしまって困りましたけど、物語自体も、実力伯仲の男女がうまく共存するための、一つの解答を示す内容となっていて、非常に普遍的な問題を扱っているなと感じましたから、古い作品でありながら、古臭さは全くないというのもちょっとした驚きでした。女性の一人であるあたしの目でみると、この結末はアニーよ良くやった、男なんて結構チョロイもんじゃん! とニンマリしてしまうのですが、男性の目から見たらどんな感じなのか、どなたかに感想を伺ってみたいものです。

そう、驚きといえばもう一つ。フランク役の石川禅。長身の体躯から朗々と発せられる歌声、軽い身のこなし、的確な演技力と華やかさ。いや、すごいミュージカルスターがいたもんだ! これに、ボードビリアン系の持ち味で達者な芸を見せてくれる今村ねずみや、三拍子揃った爽やか青年の元音楽座の畠中洋の共演とくれば、我が国のミュージカル界の未来は明るいと、希望を持たずにいられません。

石川禅は、この後「レ・ミゼラブル」にマリウス役での出演が予定されているそうです。マリウスはあまり動的な役ではないので、彼の力強さが生かされるとは考えにくいのですが、力のある人はきっと説得力のある役に作り上げてしまうのでしょうね。とりあえず注目したいところです。

そんな訳で、新宿コマ劇場に行くのがちょっとイヤイヤだったくせに、帰りはホクホク。調子に乗って友人に「まだ観た事ない新宿コマの、お子ちゃまミュージカルシリーズのシンデレラやピーター・パンも押さえておいたほうがいいかな?」と尋ねてみたら「それとは一緒にしない方がいいかも・・・」とのお返事でした。あれ?
そうなんですか? ピーター・パン観ていらっしゃる方、ぜひともお話をお聞かせくださいませんか。